『必読』ダイジェスト 2023年2月11日付の英国『エコノミスト』によると、多くの人々は、トヨタは電動自動車のレースから脱落したと見ている。

豊田章男氏は、1月26日に社長の座を自分よりも13歳年下の佐藤恒治氏に譲ることを宣言した時、「新たな管理者が自社を電動時代の方向に導くことを加速させる時が来た」と明言した。メディアによるコメントの大半は、今回の豊田章男氏によるポストの譲渡は、テスラを念頭に置いた対応策だとしている。しかし、このような見方は、過度に西側を中心にしたものだ。

BYDはトヨタの中国における電動自動車の協力パートナーであるのと同時に、トヨタにとって同社は、世界市場で頭角を現しつつあるライバルでもある。より重要な点として、同社はトヨタが過去数十年間に世界のトップメーカへとのし上がる際に発揮した多くの資質を再現している。

この東アジアの両社の企業の発展史は似ており、どちらも元々は自動車製造で起業したわけではない。トヨタの前身企業が生産していたのは自動織機で、BYDが最初に生産を手掛けたのは携帯電話のバッテリーだった。自動車業界に参入したばかりの頃、この両社とも他の世界的な自動車メーカーに大きな後れを取っていたからこそ、思い切って新たな道を切り開くことにしたのである。戦前の日本で、トヨタは燃料として木炭でガソリンを代替した試みをしたことがあるのに対して、BYDは電池の方面での専門技術を生かして、電動自動車およびプラグインハイブリッド車(中国では新エネルギー自動車と呼ばれる)の開発に特化した。両社は自国で研鑽を積んで能力を磨き、相対的に発展途上の自動車市場から着手し、後に海外に進出した。

しかし、これらの模索的な自動車製造業務はすぐに軌道に乗った。1955年から1961年までの6年間で、トヨタの輸出台数は40倍以上になり、その後も目覚ましい発展を遂げた。一方のBYDは、同社の新エネルギー自動車の生産台数が100万台に達するまで13年を要したが、その後は1年もたたないうちに200万台に到達し、さらにそれから半年後、累計生産台数は300万台に達したという。同社の業務は数十カ国で展開されており、中国、ブラジル、ハンガリー、インドなどに生産基地がある。そして、同社は米国カリフォルニア州の砂漠で電動バスを製造している。BYDは今や世界で二番目に大きなリチウムイオンバッテリーの生産メーカー(トップは中国の寧徳時代-CATL)であり、同時にトラックやタクシーなど商用車両および小型電子装置も生産している。

しかし、真に重要なのは生産と利益だ。この方面において、コンサルティング会社のシノ・オート・インサイツ(Sino Auto Insights)の分析によると、BYDはまるで「新しいトヨタ」のようだという。数十年にわたって、トヨタはずっと自動車業界における製造の天才として君臨してきた。いわゆる「トヨタ生産方式(The Toyata Way)」とは、持続的な改善やリーン生産方式、比類のないサプライチェーン管理のコンビネーションだ。これに対してBYDは別の道を歩んできた。同社は自ら自動車の座席やバッテリー、半導体などの各種部品を生産しており、垂直統合の水準が世界で最も高い企業の一つだ。しかし、トヨタと同様に、同社は効率の点でも模範的だ。BYDの株式を有する米国の投資企業スノーブルキャピタル(Snow Bull Capital)の責任者はBYDの自動化水準を大いに称賛し、「同社の工場で見かける職員は、生産ラインの端で検査をする者かロボットの修理をする者だけだ。かつてのトヨタのように、BYDは自動車業界を改めて定義した」と語っている。米国投資界のレジェンドと呼ばれるバフェット氏もBYDのファンであり、同時に大株主でもある。

効率は利益の燃料だ。1月30日、BYDは2022年の純利益の一次推計が、約24億から25億ドルで、2021年の5倍以上になる見込みだと発表した。この数字に基づいて、スノーブルキャピタルが行った計算によると、前四半期に、BYDの自動車業務の粗利率が、これまで売り上げのトップだった大手企業のテスラを上回ったという。テスラと違って、BYDの車種は多彩で、スタイルもそれぞれ異なっており、そして定期的に新車種をリリースしている。

今のところ、確信をもって言えるのは、トヨタはBYDがもたらすチャンスだけではなく、挑戦をも意識している。トヨタと同様に、BYDも自画自賛することなく、コツコツと成果を収めている。この姿勢においてもBYDはテスラと異なっている。

(『日系企業リーダー必読』2023年2月5日記事からダイジェスト)

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