『必読』ダイジェスト 「中国は他の工業国の模倣には長けているが、創造は苦手な国」と見られがちだが、1月23日に公表された報告書によると、イノベーションを測る重要な指標の一つで、中国はすでに米国を上回り、また別の面で大きな進展を遂げつつある。
米国の科学技術政策を主に扱うワシントンの無党派シンクタンク情報技術・イノベーション財団(The Information Technology and Innovation Foundation、ITIF)の報告書によると、中国の2020年のイノベーションレベルは米国の139%だったが、2010年は78%にすぎなかった。両国の経済と人口の相対的な規模を測る別の指標によると、中国のイノベーション産出は米国の4分の3で、2010年の58%を大幅に上回っている。
報告書の主執筆者で同財団の会長でもあるロバート・ワトキンソン(Robert Watkinson)氏はメディアの取材に、「中国は模倣者から革新者への転換を進めており、アジア四小龍(韓国、台湾、香港、シンガポール)が切り開いた道を歩んでいる――だが、規模ははるかに大きく、地政学的な結果もはるかに大きい」と述べた。
情報技術・イノベーション財団は、2010年から2020年までの間に、ベンチャー投資、特許、先進産業の付加価値を含む22のイノベーション関連指標を調査した。中国はほぼすべての指標で著しい進歩を遂げたという結論に達した。
中国はすでにスーパーコンピュータ、宇宙開発、人工知能(AI)、量子コンピューティング、高速鉄道などいくつかの重要分野で世界をリードする大きな潜在力があることを示している。
2020年までに、中国が保有する国際特許の件数は米国を上回った。地質学、大気科学、海洋科学を除き、中国は調査対象のすべての分野で発表した科学論文の数で米国を上回った。
だが、状況は良いことと悪いことが相半ばしている。報告書によると、「数学と統計学を除くすべての分野で、中国の研究の影響力は米国に及ばない」という。イノベーションを高度な研究開発産業やハイテク輸出に転化する点でも、中国は米国に比べ劣っている。
「覚めよ、米国:中国のイノベーション力は米国を凌駕しつつある」(Wake Up, America: China Is Overtaking the United States in Innovation Capacity)と題されたこの報告書によると、国土が広大で人口の多い中国がこのエリートクラブの仲間入りができれば、数十年間で世界の地政学、サプライチェーン、パワーバランスを変えることになるという。
同報告書はさらに、「中所得者の規模の拡大鈍化、人口の急速な高齢化、経済生産性の低下などの社会動向が中国に悪影響を及ぼす」と指摘する。
(『日系企業リーダー必読』2023年2月5日記事からダイジェスト)
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