研究院オリジナル 2023年7月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。
見通しは明るい:日本の有名ゲーム開発メーカー・Keyの親会社をテンセントが買収
7月末、日本のゲームメーカーのVisual Art'sは、同社の馬場隆博社長が引退し、同社の株式を中国のテンセントに譲ることを発表した。つまり、同社は今後テンセントの子会社になるということであり、「Key」のブランドもテンセントの所有になる。
馬場社長は、今回の引退は年齢によるものであることを強調しており、現状として同社は「史上最高の状態」にあり、過去最高の黒字を記録したことを明らかにした。馬場社長は、多くの候補者の中から「思慮の限りを尽くして」選考した結果、最終的にテンセントを選んだと語った。テンセントの目標は、「ワールドクラスのIPを作り出せる」ことを理念にした企業になり、世界的な視野でコンテンツを世界に発信することを目指すことだ。Visual Art'sはテンセントのことを、今後もこれまでどおりにストーリーの質に磨きをかけ、人々の心に訴えるストーリーを創作し続けることができると評価している。
Keyは1998年7月に設立され、業界では印象深いギャルゲームの制作で知られている。同社の代表作には、『Kanon』、『Air』、『CLANNAD』、『Angel Beats!』、『Rewrite』、『Charlotte』などがあり、2022年に同社がリリースしたRPGモバイルゲーム『Heaven Burns Red』はiOSの売り上げランキングで一時トップに立った。
業界では、馬場社長は正しい選択をしたと見なされている。テンセントは今まさに海外のゲーム業界への拡大に大きな力を注いでいる。同社は7月だけで、Visual Art'sだけでなく、さらにポーランドの有名ゲームメーカーのTechland(代表作は『ダイイングライト』)や英国のゲーム開発スタジオのLucid Gamesの買収も完了させ、さらに英国のAAAゲームスタジオのLighthouse Gamesへの投資も行った。テンセントの財務報告によると、今年第1四半期、テンセントの国際市場におけるゲーム収入は132億元に達し、前年比25%増だった。Visual Art'sの加入によりテンセントの前途はより輝かしいものとなるに違いない。
コマツが引き続き中国で進めるグローバルスマート製造産業基地の建設
中国に建設した工場をグローバル生産基地にすることはコマツの既定路線だが、最近新たな進展が見られた。7月中旬に、コマツのグローバルスマート製造産業基地に関連するプロジェクトの業務契約の締結式が山東省済寧市で行われた。主な関連プロジェクトには、高周波熱錬株式会社などの日本の産業チェーン関連企業や衆一機械設備有限公司などの中国国内企業が参加する。
高周波熱錬(中国)軸承有限公司は2011年に設立され、高周波熱錬株式会社が投資する完全外資企業であり、コマツの関連企業でもある。プロジェクトの計画によると、業界の先進水準に達する油圧式ショベルの部材のグローバル供給基地が建設され、同基地の計画年間生産能力は7500台だという。
衆一機械設備有限公司はコマツのグローバルスマート製造産業基地に3億2000万元投資する予定であり、8本の各種車体の構造部材の生産ラインが設けられ、生産ラインには先進的なロボット溶接やデジタル制御加工、フレキシブルなスマート物流技術が採用され、これによりグローバルな競争力を有する関連製品を生産し、顧客の世界的な調達および配送のニーズを満たす。
ソニー(中国)のバーチャル制作のデジタルリソースを展示したプラットフォームが公開
7月27日、ソニー(中国)は同社公式サイトに「ソニー・バーチャル制作デジタルリソース展示プラットフォーム」が公開され、広告やテレビドラマ、映画、テレビの生中継などの分野で使用可能なバーチャル撮影のデータリソースライブラリが展示された。
一般的に、映画・テレビ作品を成功させるには、デジタルリソースの方面での大規模な投資が求められる。デジタルリソースの量的な需要が大きくなるほど、制作コストもより高くなる。映画・テレビ作品に必要なデジタルリソースの量は、同作品におけるバーチャルを組み合わせた撮影が求められるシーンの数で決まる。ソニーがリリースした映画・テレビ制作のデジタルリソース展示プラットフォームは、既存の主要なデジタルリソースを業界のユーザーに展示し、応用シーンは、「ザ カリフォルニアンズ」「ネイストポイント」「サントリーニ」「ゴビ砂漠」「証券取引所」などだ。もし似たようなシーンのニーズがあるなら、既存のデジタルリソースを直接いくらか修正するだけで撮影のニーズを満たすことができ、これによりバーチャル撮影におけるデジタルリソースの制作コストを大幅に節約することができ、既存のリソースの再利用率を上げることができる。
この数年、業界はある重要な変化に注意を向けている。これまでは常に舞台裏で、中長期的な技術開発を担うソニー中国研究院とソニーデザインセンターが先頭に立って、ソニーの技術的成果を直接外部に示してきた。今回の「ソニー・バーチャル制作デジタルリソース展示プラットフォーム」以外に、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは中国で国内のゲームを支えるための「チャイナヒーロープロジェクト」を打ち出した。ソニーミュージックは中国にHi-Resストリームメディアプラットフォームを設けた。コメンテーターによると、ソニーによるこうした動きは同社の中国市場を重視するレベルが上がったことを示しているという。2023年5月、ソニーの大型ブランドイベントの「Sony Expo 2023」で、ソニー中国の吉田武司総裁は、「中国はソニーにとって重要な市場であり、我々はソニーグループ全体の力を結集させて中国市場のニーズを満たすことによって、中国で成長を続けることができる」と語った。
大学生の書き込みによるユニクロへの批判が世論の注目の的に
7月、ユニクロでバイトする大学生がネット上に書き込んだユニクロに対する批判が、大学生という集団において熱い議論を引き起こした。この大学生によると、ユニクロでのバイト代はわずか時給16元にもかかわらず、業務日誌やサンクスカードなどを書くことや掃除も行う必要があることなど「細かい規則が非常に多い」という。この大学生自身が以前にバイトしたアディダスと比べて、ユニクロでの業務の厳しさは「格段に上」だが、給料はより低い。この大学生はユニクロが自分自身を安価な労働力として搾取していると考えている。この批判に対して、ユニクロは回答しており、企業は自社の規則制度と企業文化を有し、それを受け入れるかどうかは個人の自由だとしている。
この出来事に対して、ネット世論における対立は大きく、この大学生を支持し、ユニクロは労働力の搾取をしていると批判する者もいれば、この大学生を「甘ったれ」と見なし、正味の話、いやなら辞めればよいだけのことだと反対意見も述べる者もいる。ユニクロでの仕事はキツイが、仕事の雰囲気は非常に良いと言う者もいる。
しかし、専門家は、中国では大衆が消費している日本のブランドに対して、極力世論を刺激することなく、穏便にすべきだとアドバイスしている。