『必読』ダイジェスト グローバル自動車メーカーは中国でシェアをジワジワと圧迫、浸食され続けており、これらメーカーの稼働率は2020年の73%から2023年には56%まで低下した。2024年11月25日、UBS銀行で中国自動車業界研究の責任者を務める巩旻氏はオンライン交流会で、「グローバル自動車メーカーは今後、中国で1000万台の過剰生産能力削減を必要とする可能性がある」と語った。


巩旻氏は、上述の変化が生じている主な原因を「中国国内自動車メーカーがグローバル自動車メーカーのシェアを奪っていることにある」と指摘。中国自動車工業協会のデータによると、2020年から、中国国内ブランドの乗用車のシェアが上昇を続けている。2024年、中国国内ブランドの乗用車が市場に占める比率は70.1%と高く、初めて70%の大台を超え、前年比で10.4%上昇している。


グローバル自動車メーカー各社が喪失したシェアの程度はそれぞれ異なる。巩旻氏によると、韓国系ブランドは2016年に販売台数がピークを迎えたが、その後は減少に転じ、米国系ブランドや欧州系ブランド、日系ブランドはその後の数年間でシェアが相次いでピークに達し、それからまもなく下落し始めた。


中国自動車工業協会のデータによると、2024年1月から10月までの期間、乗用車市場のシェアはドイツ系ブランドが14.9%、日系および米国系ブランドがそれぞれ11.2%、6.5%、韓国系ブランドの市場シェアはわずか1.6%で、その他のグローバルブランドの市場シェアは1.2%だった。


中国国内自動車メーカーは、新エネルギー自動車の後押しを受けて逆襲を実現した。2020年下半期、新エネルギー自動車市場が好況になると、中国国内自動車メーカーには蓄積してきた技術が備わっており、多くの新エネルギー自動車のスタートアップ企業も速やかに市場の変化に反応した。グローバル自動車メーカーは本部や開発機能が中国にはなく、コロナ禍による隔離もあったため、中国市場の変化を直接には察知できていなかった。当時はあらゆる業界が半導体不足の危機への対応に多忙を極めており、グローバル自動車メーカーは中国市場で次第に守勢に回るようになっていた。


2024年7月から10月まで、新エネルギー乗用車は販売台数において4カ月連続で普及率が50%を超えたが、グローバル自動車メーカーの主要な製品はガソリン車であり、その生産能力利用率も低下している。


一部のグローバル自動車メーカーはすでに生産能力の削減に取り組んでいる。2024年以降、ホンダは中国でのガソリン車の年間生産台数を149万台から120万台に削減することを発表している。大衆(フォルクスワーゲン)汽車集団合資公司および上汽大衆は南京工場の閉鎖を検討しており、これより前に上海の同社工場は改修が終わった後、他の機能を担うようになっている。日産自動車の中国合弁会社も年間生産能力が13万台の工場を閉鎖した。


市場の変化と中国自動車メーカーによる熾烈な競争が、グローバル自動車メーカーの収益力に影響を及ぼした。2023年以降、中国市場では熾烈な価格戦が繰り広げられ、今に至るまで沈静化する兆しは見えていない。巩旻氏によると、「2024年の夏、価格戦がいくらか緩和したが、最近になって再び激化し始めている」。さらに巩旻氏の判断によると、「2025年の自動車市場における価格戦は平年よりも早まる可能性がある」という。


中国はもはやグローバル自動車メーカーが高い収益を上げられる市場ではない。巩旻氏によると、国内の上場企業が公開しているデータを基に計算したところ、2023年にグローバル自動車メーカーが中国で取得した純利益は前年比32%減で、2024年の上半期も前年比44%減少している。


巩旻氏によると、例えば一部のニッチ市場又は高級ブランド市場に注力するなど、グローバル自動車メーカーは中国での製品戦略を調整する必要がある。同時に、グローバル自動車メーカーにとっての中国市場の位置付けは、過去の「最大の市場」、「最も効率的な工場」から「世界の開発センター」に変化しているという。また、中国の電動化およびスマート化のサプライチェーンは先進的な地位を占めており、グローバル自動車メーカーは中国にあるこれらの資源を活用して、その世界的な競争力を再構築することができるということだ。


上述の変化は、自動車部品の分野においていっそう顕著に表れている。グローバル部品メーカーもグローバル自動車メーカーと同様、主要な優位性は従来の部品にあり、新エネルギー自動車の台頭に伴い、自動車の電子アーキテクチャに根本的な変化が生じ、従来のグローバル部品メーカーによるサブシステムを統合するやり方はもはや通用しない。


例を挙げると、寧徳時代(CATL)を代表とする動力電池メーカーやファーウェイのスマート自動車ソリューションの業務部門、レーザーレーダー企業など、中国国内の新興サプライヤーが今、急速に台頭している。巩旻氏は、「中国の自動車メーカーが積極的に海外で工場を建設していくにつれて、中国国内のサプライヤーにより大きな市場シェアを獲得できるチャンスが生まれる」という見方を示した。


(『日系企業リーダー必読』2024年12月5日の記事からダイジェスト)

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