『必読』ダイジェスト 中国の自動車市場はEVとガソリン車の激烈な交替時期にあり、国際的な高級ブランド車の販売成績は芳しくない。
トヨタ自動車は2025年1月15日、高級車「レクサス」が2024年に中国市場で18万台以上を売り上げたと発表。トヨタはそれ以上の具体的な数値を明らかにしていないが、レクサスの2023年の販売は18.14万台で、2024年は微増にとどまった可能性が高い。
注目すべきは、2024年、レクサスが販売店で大幅な割引を実施したことだ。2年前には主力モデルの「ES」で購入時にはプレミアムがついたが、2024年中ばには最大6万元(約120万円)の割引が行われ、年末には一部のディーラーで8万元(約160万円)を超える値引きも見られた。
中国の自動車市場を調査するランドローズ(LandRoads)によれば、2024年12月、レクサスは1.65万台を販売し、年内で最高の販売台数を記録した。レクサスはいまのところ世界市場での販売実績を発表していない。
他の高級車ブランドはさらに厳しい状況に直面している。2024年、ボルボは中国で15.6万台を販売したが、前年比8%減だった。ハイブリッド車とガソリン車がボルボの販売を支えていたが、その売上は前年比9%減少し14万台にとどまった。一方で、EVは成長のポテンシャルを示し、売上は前年比で3%増の1.57万台となった。
販売構造を見ると、ボルボは中国以外の国際市場でも同様の傾向が見られる。2024年、世界全体で76.33万台を販売し、前年比8%の増加となった。そのうちEVは35.2万台で、前年比33%増えている。ハイブリッド車とガソリン車の売上は41万台で、前年比7%減っている。
ボルボのEVの販売比率は2024年46%に達し、高級車ブランドの中でも突出して高い比率でリードしている。
レクサスとボルボは中国市場で、ともに高級車のセカンドクラスに位置する。2024年、最高級クラスの「BBA」3社(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)はいずれも販売が減少傾向にある。
各社が発表したデータによると、ベンツは2024年に中国で68.36万台を販売し、前年比7%減少している。商用車(VAN)は2.66万台で、前年比20%減となった。同時期、アウディは64.9万台を販売したが、前年比で10.9%減少している。BMWは71.45万台を販売したが、前年比13.4%減でBBAの中では最も大きな減少幅を記録している。
ポルシェも2024年の販売を発表した。中国市場での年間販売量は5.6万台で、前年比28%の大幅減少となった。中国市場の影響で、世界全体の販売台数も前年比3%減少し31万台となっている。
上に述べた高級車ブランドは主にガソリン車を販売していたが、中国市場では新エネルギー車が徐々に主流となってきている。中国自動車工業協会(以下「中汽協」)の統計によると、2024年、ガソリン車の販売は各クラスのすべてで前年比減少している。中国乗用車市場情報連席会のデータでも、2024年7月から11月にかけて新エネルギー車の小売シェアが5ヶ月連続で50%を超えている。
新エネルギー車のシェアが拡大する中で、中国の自主ブランドは急成長を遂げている。中汽協によれば、2024年には中国ブランドのシェアが65.2%に達し、前年比9.2ポイントの増加となった。ドイツ系、日系、米系のシェアは減少している。
リ・オート(理想汽車)やセレス・グループ(賽力斯集団)など高級志向の中国新エネルギー車ブランドが国際的な高級ブランドに明確な圧力をかけている。理想汽車は2024年に50万台以上を販売し、前年比30%以上増加。賽力斯も40万台を超え、前年比182%の成長を記録した。多くの国際高級車メーカーが中国市場で困難に直面している。
BBA各社はとも電動化への転換を推進している。BMWはEVの販売でリーダー的な地位を占める。BMWは2024年世界で59.3万台のEVを販売し、前年比4.8%の増加を見せた。BMWの新エネルギー車は総販売台数の24.2%を占め、これは同社が販売する車種のうち4台に1台が新エネルギー車であることを意味している。
メルセデス・ベンツとアウディは2024年それぞれ世界で36.76万台と16.4万台のEVを販売したが、前年比9%および8%の減少となった。両社とも中国市場における新エネルギー車の販売台数は公開していない。
世界の乗用車メーカーは、異なる市場の発展状況を総合的に検討する必要がある。2024年、中国市場における新エネルギー車のシェアは40%を超え、2025年には50%を突破すると予測されるが、欧米市場では新エネルギー車の成長速度が鈍化している。
多くの高級車メーカーは電動化のペースを調整中だ。ボルボは、2030年までに販売をEVに限定するという計画を2021年に発表したが、2024年9月にはこれを放棄すると発表した。
ベンツは2024年2月、主要市場での全面EV化計画を中止し、純EVとプラグイン・ハイブリッド車の販売比率を50%にする目標を2030年まで延期している。
しかし、中国市場を前に、世界の高級車ブランドは積極的かつ柔軟な姿勢を示している。例えば、ベンツは2025年に中国市場に新型純EV「CLA」を投入する予定で、他社に先行してCLAに都市ナビゲーション支援機能を搭載する。
上海汽車が生産するアウディ(AUDI)ブランドの初のモデルは2025年4月に発売される予定で、アウディ・第一汽車の新エネルギー車は2025年に市場投入される。アウディ・ブランドは上海汽車グループの「智己(IM)」車両をベースに開発され、アウディ・第一汽車はフォルクスワーゲン・グループの高級EVを利用し、製品には中国市場に合わせてファーウェイ(華為)のインテリジェント運転システムが搭載される予定である。
(『日系企業リーダー必読』2025年1月20日の記事からダイジェスト)
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