研究院オリジナル 2025年5月後半、中国メディアの報道・論評が比較的多かった中日経済関係のコンテンツおよび日本企業は主に以下の通りだ。
日本に押し寄せる中国のベンチャーキャピタル
しばらく前に、中国の著名な投資家である朱嘯虎氏が日本で初めてプロジェクトに投資するというニュースが流れた。朱氏はかつて去哪兒、大智慧、滴滴出行(DiDi)、餓了麼、小紅書などの投資で成功を収めており、業界内では「ユニコ-ンハンター」と呼ばれている。
朱氏が投資した今回の日本のプロジェクトは「CAGUUU」で、同社はサプライチェーン管理+越境ECを通じて、中国国内のコストパフォーマンスが高い家具を日本の消費者に販売している。今回、同社が行う資金調達はシリーズAラウンドで、資金調達額は6億5000万円であり、日本の元サッカースター・本田圭佑氏が設立したX&KSKファンドと朱氏が率いる金沙江創業投資基金が合同で出資する。
業界内では、朱氏が日本に進出したことは、中国国内の各業界内での無意味な内部競争が深刻になるにつれ、国内の資本も海外に流れ始めており、日本が最も重要な目的地の一つになっていることを示している。なぜなら日本には優良プロジェクトが少なくないからだが、日本の投資家や起業アドバイザーのリソースが非常に少ないため、朱氏らは日本におけるチャンスを鋭い目で見つめている。中国では過去30年間に、数多くの優秀な投資家が登場したが、これらの投資家が日本に押し寄せるならば、中日企業に新たな発展情勢の変化がもたらされるに違いない。
日系ブランドが中国でカリスマ性を失った要因は何か?
1990年代から21世紀初頭まで、パナソニックやソニー、シャープ、トヨタ、ホンダ、ニッサン等の日系ブランドは中国市場で絶対的な支配的地位を占め、同ブランドは中国消費者の心の中でずっと高性能と高品質の象徴だった。しかし今では、これらのブランドは中国で敗北を喫するか、かつての栄光を失っている。あるメディアの記事によると、その背後には5つの角度からの要素がある。
一、産業政策の要素。中国が長期にわたって実施した国産代替戦略は日系企業の技術障壁を突破した。90年代、中国政府が推進した「市場と技術との交換」戦略で技術移転(例えばトヨタは一汽と、パナソニックはハイアール(海爾)と協力)を手に入れた。2010年以降、中国は自主イノベーションへの転換を図り、国有企業と民間企業(ファーウェイ、BYD、美的、格力)は「リバースエンジニアリング」と自主開発によって、日系企業の技術障壁を速やかに打破した。2015年以降から現在に至るまで、中国政府は半導体や新エネルギー自動車、工業ロボットなど新興の科学技術業界を大いに支援することにより、日系企業のハイエンド市場に直接圧力をかけている。
二、市場ニーズの要素。中国における消費のアップグレードと日系企業戦略にミスマッチが見られる。2010年以前の中国消費者は「メイド・イン・ジャパン=高性能」と考えていた。しかし、中国のZ世代(95年以降生まれの世代)は国産のコストパフォーマンスが高い製品を好む傾向が強く、2024年の『中国消費傾向報告』によると、若年層消費者の88%が、国産ブランドの品質は海外に引けを取らないと思っているが、少なからず「傲慢」な日系企業はこのような変化を認識しておらず、長期的に高いプレミアム価格(例えば、ソニーのテレビはTCLより50%も高い)を維持してきたが、技術更新が遅く、現地化が十分ではないため、消費者の流出を招いている。
三、技術イノベーション、日系企業の「閉鎖的な体制」は中国企業の「速やかな更新」に太刀打ちできない。日本企業は技術イノベーションの面で保守的で柔軟性に欠ける傾向が見られる。例えば、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)はかつて世界のベスト5に入る携帯電話ブランドの一つだったが、頑なに自社のシステムと閉鎖的なサプライチェーンに依存したため、最終的にファーウェイや小米に取って代わられた。パナソニックはプラズマ技術に固執し、液晶パネルへの転向を拒否したため、最終的に京東方、TCLに負けてしまった。中国企業は「技術のリープフロッグ」を得意とし、技術の分野で開放性と融通性を十分に発揮している。
四、サプライチェーン競争。日本の「ゼロ在庫」システムは中国の「サプライチェーンクラスター」に追い越されてしまった。日系企業はジャスト・インタイム生産(JIT)に依存し過ぎており、サプライチェーンが過度に集中しているが、例えば日系自動車メーカーは部品の40%を日本国内に依存している。中国の企業は長江デルタや珠江デルタに世界で最も整備された産業チェーンを形成しており、鋼材から製品完成までフルセットの生産を72時間以内に完了することができる。2024年、中国サプライチェーンの反応速度は日本の4倍速い上に、コストは日本より40%も低かった。
五、ブランド戦略。日系企業は「過去の成果を保持すること」に慣れているが、中国企業は「イノベーション」に重きを置いている。ソニーは40年前の「Walkmanテイスト」というレトロな趣を打ち出して入るのに対し、ファーウェイや小米はAIという新鋭科学技術の大旗を高々と掲げている。トヨタは依然として「乗っていても壊れないトヨタ」を堅守しているが、中国の新エネルギー自動車メーカーは、自動車をスマートフォンのような急速に更新される電子消費品に定義し直そうとしている。
ホンダは全面的に電動化のペースを弱めるも、中国市場は例外
5月20日、ホンダは記者会見を開き、今後はハイブリッド化を加速させ、電動化のペースを落とすことを発表した。ホンダ自動車の社長兼CEOを務める三部敏宏氏は、2030年度までの電動化投資計画を元々の10兆円から7兆円(484億ドル)に下方修正するという考えを示した。
ホンダが行った戦略調整の背景には、5月に発表された財務報告があり、同社の営業利益は前年比12.2%減で、年間の純利益も前年比で24.5%下がった。2025年度の営業利益は前年比59%減になることが予想されている。ホンダによると、現在BEV市場の成長速度は緩やかになっており、当初の「純電動主導」の戦略はすでに実情に合わなくなっているため、まずはハイブリッドを安定させることにより注力する。
しかし、各方面から見ると、ホンダの中国における電動化へのモデルチェンジのペースは落ちていないようだ。あるメディアは「内部関係者」からの情報を引用し、ホンダは中国で依然として上海モーターショーで発表した最新戦略に従って、電動化の推進、スマート化の発展を引き続き加速させるという見解を示した。
しかし、現在の中国自動車市場はもはや成熟した製品の導入によって掌握できる地域市場ではない。昨年、ホンダは「燁」ブランドを足がかりに、中国市場のイメージを刷新しようとしたが、4月の合弁企業の新エネルギー車種TOP10に、トヨタとフォルクスワーゲンは上位にランクインしたが、ホンダはランキング入りすらできず、熱い期待を寄せていた広汽ホンダP7と東風ホンダS7の市場における市場での業績はイマイチだった。
あるコメントによると、ホンダにとって、もし世界市場における純電動化戦略の縮小と中国市場における継続的な推進の両方に気を配りたいのならば、新たな戦略を実施する必要があり、それはつまり中国国内のサプライチェーンとの密接なつながりを持つことだ。フォルクスワーゲンとトヨタは以前から現実をはっきり認識し、積極的に中国国内のサプライチェーンとの融合を進めており、国内に大量の電気自動車を送り出している。それに比べて、ホンダの覚醒は少し遅れている。
中国不動産市場の不振にもかかわらず、YKK APは引き続き建材への投資を強化
5月末、世界で名高い窓・玄関ドアなど建材商品ブランドのメーカーであるYKK AP株式会社が、江蘇省南通市で進める投資プロジェクトが着工した。
中国不動産の黄金時代と同期して、YKK APは1999年、2001年、2004年に大連、深セン、蘇州の3カ所における建材の生産・販売基地の建設に投資した。しかし、2021年から、中国不動産市場は曲がり角を迎え、落ち込み続けており、現在でも依然として回復の兆しが見られず、今後に対する市場の予想も一様に悲観的なものだ。しかし、このような状況下で、YKK APは20年の歳月を経て、さらに南通市で工場を建設しており、同プロジェクトの計画によると総投資額は1億ドルで、完成すれば現時点で同工場は中国最大の生産・販売基地となる。
業界内の分析によると、YKK APはこのような現在のトレンドに逆行するような動きをとる際に、以下の複数の面で考慮をめぐらせた可能性がある。
一、中国市場はYKK APにとって常に最重要であり、同社はシンガポールやインドネシア、米国、ブラジルなど世界の多くの地域に工場を構えているが、同社の代表取締役会長を務める堀秀充氏は唯一、中国法人の総責任者の職位を兼任している。
二、現在の不動産市場は全体的に不振に陥っているとはいえ、構造上では依然として多くのチャンスが存在している。例えば、中国における消費のアップグレードはずっと続いており、ミドル・ハイエンド市場にも需要があるが、YKK APが生産しているのはまさにハイエンドな建材製品だ。この他に、新古マンションの改修におけるアップグレードも市場規模が相当なものだ。
三、YKK APは依然として、中国経済の強靭さと将来的な潜在力に対して楽観的な見方を抱いており、経済の下げ止まりと回復が始まる前に、生産能力を配置しておけば、先手を打つことができる。
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