【毎週日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 海南自由貿易港が日本企業にもたらす六つの機会。/これまでにない協力が日本製薬企業の中国における新たなレーンを作り出している。


海南自由貿易港が日本企業にもたらす六つの機会


海南自由貿易港の全島「封関運営」が、2025年12月18日に正式に開始された。この中国の重大な戦略行動は、日本企業にどのような機会をもたらすのか?研究院は、主に以下の六つの機会があると考えている。


一、ゼロ関税政策とサプライチェーンの再構築


「封関」後は、海南のゼロ関税商品品目の比率は現在の21%から大幅に74%まで引き上げられ、より多くの輸入商品をカバーする。日本の製造業企業は精密部品と設備の輸入を重点的にフォローすることができる。


海南の「原料、補助材料のゼロ関税」リストは、自動車、電子、機械などの業界にコスト優位性を提供する。日本の自動車部品企業は海南自由貿易港を経由して原材料を輸入し、「加工で付加価値を30%増加する場合、関税免除」という政策を利用し、完成品を中国内陸に提供または東南アジア市場に輸出することができる。トヨタが海南で新エネ特殊車を組み立てる事例がこの方式の可能性を裏付けている。


また、設備アップグレードと研究開発の投入にも注目できる。「自社用生産設備がゼロ関税」という政策は、企業がより低コストで日本の先進技術設備を導入することを可能にし、これは特に半導体、ハイエンド裝備製造などの業界に利益をもたらす。例えば、日本医療器械企業の坂田製薬は、海口で近視防止眼鏡の核心部品の現地化生産を計画し、自由貿易港政策を生かすことで生産コストの削減を目指している。


二、離島免税と消費財市場の拡大


海南における年間数百億元の離島免税市場は、日本消費財に直接的な販売チャネルを提供する。


化粧品、健康食品と食品輸入では、日本の高級化粧品(例えば、資生堂)、健康食品(例えば、明治)は、海南免税チャネルを経由して中国市場に入り、ゼロ関税と低税率という相乗効果の利益を享受できる。例えば、日本貿易振興機構(JETRO)が組織する日本ブランドは、消費博覧会を通じて海南市場における継続的な輸出を拡大しており、博覧会の初日で売上高が予想を上回った企業もあった。


越境ECとオフライン体験の融合では、日本企業は海南の「EC+免税」モデルによって、オンラインとオフラインを一体化した販売ネットワークを構築できる。例えば、(日本企業であるオークファン(Aucfan Co.,Ltd.)の)傲可凡(海南)網絡科技有限公司は、「奈特喜」というプラットフォームを通じて日本サプライチェーン資源を統合し、中国消費者に越境EC商品の直接購入サービスを提供している。


三、現代サービス業と地域ハブ機能


海南の物流、金融、ヘルスケアなどの分野での位置付けは日本企業の優位性と高度に合致する。


コールドチェーン物流と越境貿易では、海南は「地域性国際コールドチェーン物流センター」の建設を計画しており、日本企業はゼロ関税政策を生かしてコールドチェーン倉庫、越境生鮮貿易を展開できる。例えば、辻水産は消費博覧会でマグロを展示し、海南を経由して中国ハイエンド海鮮市場を拡大していくことを計画している。


越境金融(クロスボーダー・ファイナンス)と資金管理では、海南は外資金融機関による新金融サービスの展開を許可し、多機能自由貿易口座システムを構築。日系銀行、保険機構はこれにより海南の日本企業に越境融資、為替リスクヘッジなどのサービスを提供でき、同時に東南アジア市場との金融接続を模索することもできる。


ヘルスケア・医療や観光との融合においては、ボアオ(博鳌)楽城先行区は外資独資による医療機関の設立を許可し、幹細胞、免疫細胞治療などの先端技術の臨床転化を支援している。日本ヘルスケア企業は海南のエコシステム資源を組み合わせて、ハイエンドのヘルスケアリゾートプロジェクトを進められる。例えば、湘南美容は海南で美容医院を展開し、日本の看護技術を導入する計画を建てている。


四、RCEPと海南政策の相乗効果


海南自由貿易港政策とRCEP協定が協調優位性を形成している。


関税免除と市場参入によって、RCEP協定の下、日本が海南に対して輸出する電機、アパレルなど695品目の関税はさらに低下するが、海南の「ゼロ関税」リストはメタノール、医療器械など1674品目に及び、RCEPに勝る。例えば、日本食品飲料用混合香料(HS33021090)はRCEPの下で5年以内に関税が8.2%まで低下するが、海南自由貿易港は既にゼロ関税を実現している。


地域産業チェーン統合において、日本企業は海南を経由して「日本R&D(研究開発)+海南加工+東南アジア輸出」モデルを展開できる。例えば、トヨタは海南で新エネ特殊車輸出中継基地を建設することを計画しており、RCEP関税優遇を利用してシンガポール、ベトナムなどの市場に完成車の展開を拡大していく。


五、ハイテク技術と未来産業協力


海南が重点的に発展させる育種業、深海、航空・宇宙(陸・海・空)という三大未来産業では、日本企業に技術協力の余地を提供する。


深海及び航空・宇宙裝備では、海南は深海石油ガス裝備の現地生産と商業航空宇宙関連の全産業チェーンの発展を推進し、日本企業は海中石油採掘技術、衛星部品などの分野のR&Dや製造に参加できる。


デジタル経済とグリーン・テクノロジーでは、海南は人工知能、バイオ製造などの産業クラスター発展を奨励し、日本企業はデータの越境流通、低炭素技術応用などの面で協力を模索できる。例えば、華熙生物と日本ロート製薬は合弁企業を設立し、海南で再生医療の研究開発を展開している。


六、政策支援とサービス保障


海南は日本企業にフルプロセスのサービスと便利な制度を提供する。


ワンストップ行政サービスによって、海南自由貿易港日本企業協力センターは工商登録、政策相談、ビジネスマッチングなどのサービスを提供、既にオークファン、MIDAS IT(マイダスアイティ)などの日本企業の現地での設立を支援した。


人材と税收優遇においては、ハイエンド人材の個人所得税の実質税率を15%免除、離島出張、休暇日数は居住時間に算入。企業所得税「二つの15%」政策(奨励類産業企業15%、海外直接投資所得税は免税)がさらに運営コストを低下させている。


これまでにない協力が日本製薬企業の中国における新たなレール


2025年10月に、日本製薬大手の武田製薬は信達生物と114億ドルの創薬協力協議に達し、この中国バイオ医薬の对外権利付与の記録的取引は、武田製薬の3年以内の中国での累計投資が、150億ドルを超えていることを浮き彫りにした。


2023年から、武田製薬は中国で「買収モード」を開始している。11.3億ドルで和黄医薬(HUTCHMED)のフルキンチニブ(呋喹替尼)の海外オプション権を取得し、13億ドルで亜盛医薬のオルベレンマチニブ(耐立克)の世界のオプション権を獲得し、その第二の大口株主となり、さらに2025年に信達との114億ドルの協力に至り、3年累計での取引は150億ドル超となっている。


武田の董事長、総裁、CEOのクリストフ・ウェバー(Christophe Weber、中国語表記・衛博科)は、中国バイオ薬に特別な関心を持ち、「拓維(開拓維持)中国」戦略を取り、「2030年までに中国を武田の世界第二の市場にする」と打ち出している。これは主に二つの要因に基づく。一つは、中国が既に創薬イノベーションのライフサイクルをカバーする政策支援のネットワークを構築したことである。国家薬監局は臨床試験申請審査周期を30日以内に圧縮し、新薬が認可から医療保険纳入までの期間を5年から1年程度に短縮することで、80%近くのイノベーションによる新薬が上場して2年以内に医療保険目録入りすることができ、これは世界的に見ても非常に激しい政策である。二つには、中国の研究開発の実力が質的飛躍を実現したことである。例えば、今回、武田と協力する信達は、そのIBI363二重特異性抗体融合タンパク質、IBI343 ADCなどの製品がいずれも世界初の薬であり、武田の空白を埋めることができる。


協力の成果は喜ばしいものである。例えば、武田製薬と和黄医薬の協力では、武田が海外商業化を担当するフルキンチニブは、2025年7~9月に成長が顕著で、海外販売額は9700万ドルに達し、前年比34%向上した。特に欧州市場では、販売額が前年比200%急増、日本市場では前月比82%成長し、武田の世界販売ネットワークの中で顕著な成長点となった。


実際、アストラゼネカ、メルクなどの多国籍製薬企業も武田と同様に、中国での展開を加速させている。

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