『必読』ダイジェスト ブルームバーグ電子版の7月14日付報道によれば、中国の製薬会社が進めるイノベーションで、バイオテクノロジー技術の構造的な転換が始まっている。それらはすでにジェネリック医薬品の模倣製造期を通りこし、新薬開発分野で西側の支配的地位を崩しつつある。
ブルームバーグの独自分析によると、昨年、中国で研究開発段階に入ったがん治療薬やダイエット薬などの新薬は1250種類以上に急増してEUを大きく上まわり、米国(1440種類)に迫っている。
伝えられるところによると、かつては安価なジェネリック医薬品の模倣製造で知られた中国の製薬会社がいまではよりハイレベルの医薬品を生産し、医薬品監督機構や西側の製薬大手から一目置かれつつある。
この分析は、中国の医薬開発分野におけるイノベーションの中心で根本的な変化が生じつつあることを示している。トランプ大統領が対米輸出医薬品に関税を課すと脅した時期における中国のバイオテクノロジーの進展――その規模は徐々に明らかになってきた――は、医薬品のイノベーションがAIやEVのように大国間競争の新たな舞台に押し上げられる可能性を秘めている。
中国国内で2003年から医療関連企業への戦略的なコンサルティングを行ってきた外資系パートナーは、「このように大掛かりなイノベーションは見たことがない。製品はメイド・イン・チャイナで魅力的であり、開発速度も速い」と語る。
報道によれば、この変化はかつてないスピードで進行している。2015年、中国が医薬品監督システムの全面的な改革に着手した際、新薬開発規模は世界全体のわずか6%にも満たず、日本や英国に後れをとっていた。制度改革は許認可手続きの最適化、データ品質基準の整備と透明性の向上を促した。政府が掲げた「中国製造2025」政策もバイオテクノロジー分野への投資を刺激した。これらの施策は研究者や起業家たちの新薬開発意欲を呼び起こした。
メディアは製薬情報企業の責任者の話を引用し、「現今の中国の力量は米国とほぼ互角で、おなじような成長曲線を有している。数年以内に新薬開発数で中国が米国を上まわるという見方は決して誇張ではない」と伝えている。
報道によれば、中国は新薬の開発数だけでなく、バイオテクノロジーの質の高さでも驚異的だ。業界では中国の製薬会社が薬効に優れ苦痛も和らげる新たな治療法の創出で、すでにさまざまな結果を出している。米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)など世界でももっとも厳格な監督当局が中国の医薬品は全体的に十分な信頼性があると認めつつあり、より多くの審査リソースを投入して迅速な承認手続きを進めるに値すると見ている。それにより優先審査、画期的な治療法の認定、ファストトラック審査といった業界も羨むような扱いを受けるようになってきている。
データによれば、2024年、中国の製薬会社は米国における医薬品のスピード審査取得件数でEUメーカーをわずかに上まわった。ただし、こうした待遇を受けた中国製新薬の絶対数は米国企業にはまだ遠く及ばない。
報道は、これまでリスク回避が中国の医薬品開発を阻んできた要因の一つとも指摘する。現在に至るまで業界をリードする多くの製薬企業は既存の治療法の改良や旧薬の改良に専念し、前例のない新療法の開発には消極的である。こうした新規開発は失敗のリスクが高いためだ。この分野はいまなお米国や欧州、日本が主導している。
しかしながら、中国企業の画期的な成果が製薬大手によって過去最高額で争奪される例も増えている。昨年、中国の康方バイオテック社(康方生物科技公司)が開発した抗がん剤は米国メルク社の薬よりも効果的であることが証明され、中国医薬品業界への新たな投資熱を引き起こした。
今年5月、ファイザーは中国三生製薬と12億ドル超の前払い条件で抗がん剤の提携契約を結び、新薬買収額の新記録を打ち立てた。
米国ディールフォーマ(DealForma)バイオ医薬データ社によれば、こうした取り引きの価値と頻度はともに増加傾向にあり、中国医薬品が国際競争力を備え、利益を創出するとの認識が広がっていることを示している。
報道はさらに中国のバイオテクノロジー企業の台頭を支える条件のひとつに、臨床試験などあらゆる段階で低コストかつ高速で開発可能な優位性があると結論づけている。
(『日系企業リーダー必読』2025年7月20日の記事からダイジェスト)
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