【毎週日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 今回の注目すべき点は、「中日両国のAI発展に大きな差が生じている理由」、そしてあるウォッチャーが指摘する「日系企業の対中投資・貿易における関心の重点に構造的な変化が起こりつつある」ということだ。
中日のAI発展に大きな差をもたらした要因とは?
日本政府が人工知能(AI)産業の発展を重視するようになり、2025年には「AI法案」を成立させたものの、同産業の発展において、中国には遠く及ばないと言われている。世界ですでに発表されている1300余りの大規模モデルのうち、中国は36%を占め、米国に次ぐ規模となっている。生成AI関連の特許出願数は、過去10年間で世界全体の約5万4000件のうち、中国だけで3万8000件を占め、世界第1位で、日本は大きく引き離されている。中日両国のAI産業発展格差を生み出したのは何か。研究によれば、以下の要因が考えられる。
第一に、インフラ面での差が大きい。AIは今や「デジタル重工業」の様相を呈しており、データ、コンピューティング、ネットワークが勝負の鍵を握る。世界インターネット発展報告によると、中国の世界インターネット発展指数は第2位、5Gユーザーは世界の52%を占め、コンピューティング能力の総量も世界第2位である。一方、日本はこれらのインフラにおいて中国との規模の差が非常に大きい。中国が巨大なデジタル鉄鋼工場だとすれば、日本は小さな工房のようなものである。
第二に、発展の道筋が全く異なる。最も大きな違いは、中国企業がモデルを応用シーンに組み込むのに対し、日本はシーンの中でモデルや技術を探し求めている点だ。中国企業はまずAIを業務で使い、そこからモデルの能力で不足している部分を補うというアプローチで、技術はシーンに従属する。アリババの「通義(Tongyi)」やバイトダンスの「豆包(Doubao)」などの典型的な代表例は、オープンソースや無料方式を採用し、大規模モデルを検索、EC、ショート動画、オフィススイートなどの様々なアプリケーションに組み込み、急速に反復・改善を重ねている。この方式により、中国は世界の第一陣営に位置し、全体的な能力ですでに米国に迫っている。一方、日本は非常に保守的で、まず規制の枠組み(レッドライン)を設定し、その範囲内でユースケースを探すという姿勢だ。2025年の国家AI戦略でも「リスクの制御可能な範囲で生成AIを発展させる」ことが繰り返し強調されており、これが発展のスピードの遅さにつながっている。
第三に、AIの応用において、中国は非常にアグレッシブであり、金融のリスク管理からスマートカーに至るまで、あらゆる業界で全面的な「全産業AI化」が進められている。一方、日系企業は非常に慎重で、AIの利用を認めている企業でも、経営陣の最初の反応は、「どう活用するか」を考えるよりも、規制線を引き、禁止事項を設けることであるケースが6割以上を占める。『日本経済新聞』の報道によれば、ある東京の製造業企業の社員は、会社で生成AIを使うには「こっそりやる」と語っているという。
第四に、人材数の差である。中国は世界最多のエンジニア人口を有する一方、日本の経済産業省は2030年までに79万人のソフトウェア・エンジニアが不足すると予測しており、現在のAI修士課程修了者は年間わずか2800人である。「中国はエンジニアがあまりに多すぎるので、(手持ち無沙汰な)彼らに良い問題を見つけてあげる必要がある。日本はといえば問題は多いが、エンジニアがあまりに少なすぎる」と指摘する声もある。
日系企業の対中投資・貿易における注目点に構造的な変化
先日、アンダーソン・毛利・友常法律事務所(北京)の若林耕首席代表は、2025年通年の法的動向を継続的に観察した結果、日系企業の対中投資・貿易における関心の注目点に構造的な変化が生じているとの見解を示した。従来は市場アクセスやビジネスチャンスに焦点が当てられていたのに対し、2025年の日系企業の関心を示すキーワードは、「規制の詳細化」「責任の強化」及び「リスクの前倒し」へとシフトしているという。
2025年、中国はデータガバナンス、輸出管理、医薬品規制、競争秩序、外資政策など、複数の分野で重要な法律・規制を集中的に制定・施行した。全体的に見られる傾向として、第一にデータとデジタル化要素が多くの法律分野に浸透していること、第二に輸出管理と国際政策リスクが制度化されていること、第三に規制ルールが絶えず具体化され、企業のコンプライアンスにおける余地が狭まっていること、の3つがある。
若林氏は、中国市場は依然として規模とサプライチェーンの強みを有するものの、制度の複雑さは著しく増しており、企業の競争力は法令環境の正確な理解とリスク管理能力にますます依存するようになっていると分析している。
サイゼリヤ、広州新工場を世界サプライチェーン拠点に
3月、日本の外食チェーンであるサイゼリヤの広州黄埔区における新工場が正式に竣工した。この投資額2億元超の生産能力拠点は、日本工場、オーストラリア工場と並ぶ、世界三大中核生産拠点の一つとなった。この布石は、中国がサイゼリヤにとって重要な消費市場であるだけでなく、世界のサプライチェーンにおける重要な支点となりつつあることを意味する。
サイゼリヤが中国での生産投資を強化する背景には、複数の理由がある。第一に、中国における店舗数が持続的に増加しており、中国はサイゼリヤの海外店舗の中で最も成長が著しい市場の一つとなっている。店舗規模の拡大に伴い、現地生産は供給コストの削減に寄与する。第二に、中国には成熟した食品加工サプライチェーンと物流システムが整備されており、サイゼリヤの現地生産は高い配送効率と安定した品質を実現できる。第三に、コストと規模の優位性である。中核となる食材の生産を集中させることで、サイゼリヤが一貫して掲げる低価格戦略をさらに強化することができる。
分析によれば、過去数年間、サイゼリヤの中国における展開は主に店舗拡大に集中していたが、今回の生産拠点の建設を通じて、同社はサプライチェーンの掌握力を強化しつつあり、それは中国市場を見据えるだけでなく、将来的なアジア市場全体への拡大をも見据えた動きであると考えられる。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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