2021年、中国の自動車市場全体の業績が芳しくなかったが、日本車も例外ではなく、大半の自動車メーカーが販売台数を落としている。前年比8.2%増だったトヨタを除いて、中国ではホンダの販売台数が前年比4%減、日産が5.2%減であり、日本車メーカーで最も苦戦しているマツダが前年比14.3%減で、わずか18万4000台しか売れなかった。これでマツダの販売台数は3年連続の大幅減であり、マツダは一体どうしたのかという声が人々から上がるのも無理のないことだ。


モデルチェンジが遅く、カーラインアップが単調

中国市場において、マツダは先進的な自動車製造技術と運転操作性で一定数のコアユーザーを獲得しており、「東瀛宝馬(日本のBMW)」と呼ばれている。マツダが現在の状況に直面している原因は、業界内での分析によると、最も致命的な点としてモデルチェンジが非常に遅く、カーラインアップが単調なことにあるという。中国の自動車市場はこの数十年間で急速に発展して、すでに新たな段階に入っており、市場は複雑かつ多様になり、競争も熾烈さを極めているため、成功を収めたメーカーも時代にしっかりついて行って、臨機応変に対応する必要がある。モデルチェンジの加速こそ中国の自動車市場を奪取するための主要な戦略であることは、現在の業界の共通認識であり、半年に1回はマイナーチェンジを行い、2年に1回はフルモデルチェンジを実施することが当たり前の状況だが、そのペースについて行けなくなれば、すぐに市場シェアを失ってしまう。

しかし、マツダは異色の存在だ。2021年に同社が発売したニューモデルはCX-30 EVだけだ。2022年1月時点で、マツダが中国市場で販売しているモデルは、2種類のセダンと5種類のSUVの計7車種だ。これに比べて、2021年にBMWが中国市場で発表したニューモデルは25種類、販売台数は前年比8.9%増で、過去最高を記録した。2022年に同社は26種類の新車を発表する予定だ。

モデルが少ないことに加えて、モデルチェンジの速度が遅いこともマツダの大きな欠点だ。三代目のMAZDA3アクセラ(次世代モデルではない)は2014年に発表されたが、2020年までの6年間の歳月を隔ててようやくフルモデルチェンジが行われた。現モデルのマツダ6アテンザも2014年に発表されたが、今に至るまでフルモデルチェンジが行われていない。

ホンダCR-Vとは比較にもならない中国市場におけるマツダCX5の販売台数

これまでずっと、マツダは自動車運転技術に対して飽くなき追求を続けており、もはや固執とも言える境地にまで達しているが、これについて、「他社はお金を儲けるために自動車を販売しているが、マツダは自動車を製造するために車を販売している」と冗談交じりに言う者もいる。マツダにとって、先進技術さえあれば人気がなくても不安はないのだ。

しかし、現実はそのような訳にはいかない。経済発展の段階や地域文化などの要素が異なるため、中国市場の消費理念や消費ニーズは欧米や日本と著しく異なる。自動車の技術性能に関しても、中国の顧客が自動車に対してより興味を持つのは、広い車内空間やスタイリッシュな電子装置、静かで乗り心地が良く、燃費が良いかどうかなどだ。その典型的な例はマツダのCX5だが、その主要なライバルであるホンダCR-Vと比べると、技術の先進性や運転操作性、コストパフォーマンスなどの方面で、CX5はほぼ全てを上回っているが、中国乗聯会が公表したデータによると、2021年のホンダCR-Vの年間販売台数は22万台以上で、合弁企業が生産した中型SUVのランキングでトップに立っているのに対し、マツダCX5の販売台数はわずか2万6100台で、前年比23.34%減だったという。

その売り上げ不振は主に中国の顧客がマツダCX5に対して抱く2つの大きな不満に起因する。一つは、車内空間が狭いこと、もう一つは運転席のセンタークラスターの表示画面が小さすぎることだ。マツダは自動車の運転操作性に重きを置いているため、自動車のサイズをあまり大きくすることができない。センタークラスターの小さな表示画面に至っては、マツダの説明によると、運転時に注意が散漫にならないようにするためだという。しかし、中国の自動車購入者の大半は自動車を日常生活に使用するため、車内空間の広さを求める。さらに自動車は中国の消費者の多くにとってステータス的な役割も果たすが、現在の自動車のセンタークラスターの表示画面は座席前部の正面を縦に貫くように配置されているのに対し、マツダの自動車の小さな画面は時代遅れで安っぽく見えるため、ダサいと思われてしまう。

明らかに、マツダは中国の顧客の好みにマッチしていないが、それはある種の傲慢さだという声も上がっている。実のところ、中国市場はマツダにとって非常に重要だ。中国は長年にわたってマツダの世界における北米につぐ第二位の市場にあり、重視しない訳がない。

これまで信じてきた理念を貫くことができるか?

マツダは中国市場に対して無知蒙昧ではないし、同市場を蔑ろにしているわけでもないことは理解できるが、マツダは以下からどれか一つを選択しなければならない。それは市場に対して妥協して屈服するか、それとも自身がこれまでに信じてきた理念を貫くかだ。この選択は企業の長期的な戦略の位置付けにかかわる問題だ。マツダは後者を選んだ。2020年に、マツダは「今後2年間は新車を発表」せず、大きなモデルチェンジも行わないと宣言した。この選択には勇気が求められる。なぜなら、現在ドイツ、米国、日本など各国の自動車メーカーが先を争うように中国の消費者の歓心を買おうとしているからだ。トヨタはアバロンの他に、昨年はさらにアリオンを発表したが、中国の消費者にとって受けの良いネーミングをしただけでなく、アリオンに関して、トヨタの豊田章男社長は中国人消費者が好むロングホイールベースや広い車内空間を意識して、わざわざ指示を出したという。

マツダの選択は正しかったのか?大半の人々はマツダが自滅の道を選んだと見ているが、この見解も一方的と言えるかもしれない。市場ニーズを追求する企業と技術志向を堅持する企業のどちらも大きな成功を遂げた事例があり、例えば、アップルのスティーブ・ジョブスは、「消費者は自分に何が必要かを分かっていない」という見方を示していた。マツダはこれまで100年以上にわたって熾烈な市場競争を生き残って発展を続けてきたが、同社は今まさに独自路線を貫こうとしている。

中国、米国そして欧州の三大自動車市場で純電気自動車市場のシェア拡大が続いており、純電気自動車の発展の勢いはとどまらないレベルに達している。主要自動車メーカーの大半は自動車の電動化やスマート化技術の発展に全力で取り組んでいる。しかし、マツダの目は依然として従来型自動車技術の方向に向いており、6気筒や後輪駆動をマツダの最新モデルの目玉にしている。マツダは電気自動車の発展において主要自動車メーカーに完全に後れを取っており、中国市場では電気自動車モデルのCX-30 EVしか発表しておらず、しかもすでに時代遅れともいえる従来型燃料自動車を電動式に改造したタイプで、連続走行距離はわずか450キロにもかかわらず、販売価格は20万元と高く、とても値段に見合っているとは言えない。

Canalysが発表した報告によると、2021年に世界の電気自動車台数(EVs)は前年比109%増で、中国大陸における電気自動車の販売台数が世界の半分を占め、新車販売台数全体の15%を占めた。議論の余地なく、中国の自動車市場は新たな時代を迎えており、マツダは中国で持ちこたえられるのかというのが率直な疑問だ。どんなに優れた技術でも時代に逆行するなら、ついには終局に向かう。かつてノキアが頂点から転落したことを反面教師とすることができる。(JPINS/文

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