研究院オリジナル  創業板上場委員会は9日、安徽富楽徳科技発展股份有限公司(以下、富楽徳と略称)の深セン創業板への上場を審議・可決した。公開資料によると、上海申和公司(以下、上海申和と略称)は富楽徳の支配株主であり、上海申和は日本のフェローテックの完全子会社でもある。つまり、この会社は中国株式市場への上場を成功させた日系企業だ。

富楽徳は2017年に設立され、半導体とディスプレイパネルの2つの分野に焦点を当て、半導体及びディスプレイパネルメーカーの設備の精密洗浄サービスの提供に力を入れている。

異例のスピードで上場果たす

富楽徳の上場が注目を集めたのは、日系持株企業というだけでなく、「3年分の決算報告書を有する」という最低要件を満たしてまもなく、中国大陸部の企業としては異例のスピードで上場が実現したからだ。

財務的な観点から言えば、このスピードは、中国株式市場への参入を切望するフェローテックの戦略と関連性がある。富楽徳が短期間で上場できるように、上海申和が20年以上発展してきた洗浄関連業務を富楽徳に移転したため、同社が2017年に設立された。富楽徳の2018年の売上高は1億3500万元に達し、純利益も2556万5600元に達し、短期間でインテル、台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)、中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)、京東方科技集団(BOE)など国内外の汎半導体業界のリーディングカンパニーとの提携関係を構築した。富楽徳はまた、日本のフェローテックとの間で、自社の事業の多くを譲渡する関連当事者取引を頻繁に行っている。2018年と2019年において、フェローテックは富楽徳の顧客上位5社のうちの1社であり、サプライヤー上位5社のうちの1社でもある。

ただ、富楽徳のこうした動きには市場からも疑問の声が上がっている。同社のやり方に疑問を持つ者は、関連当事者取引だけでなく、富楽徳の研究開発費率が同業界の平均水準を下回っていること、研究開発者の6割が専属ではないこと、行政処罰を多く受けていることなどを指摘した。さらには董事長の賀賢漢氏が江蘇省昆山市から「老頼」(借金を返済しないために裁判所に消費を制限されている)に名を連ねるというスキャンダルも飛び出した。

それにも関わらず、富楽徳は敷居の高い中国株式市場に「上場」することに成功したが、その原因は、米国など西側諸国の制裁が強化されるにつれ、中国の半導体産業の安全が深刻な脅威にさらされ、中国政府が半導体産業の発展の加速化を最重要課題とし、同産業内の企業に各方面から優先的に支援したためだ。

日本の親会社が中国で最高のチャンスつかむ

現段階でフェローテックは中国で最高のチャンスを迎えており、これは同社が長期的に中国で事業を発展させたことへのリターンでもある。

フェローテックは1980年に設立され、大手が乱立する日本の半導体産業の中では「弟分」にすぎなかった。同社は1996年に日本のJASDAQに上場した。東芝、NEC、日立、富士通などの日本企業は技術、市場、外交などの理由から中国市場に慎重な姿勢だったが、フェローテックはこうしたことにとらわれず、積極的に中国市場に進出したため、中国はフェローテックの海外展開で大きな業績をおさめた地域の1つとなり、売上高の半分近くを占めている。現在では、半導体装置・部品洗浄事業の中国市場でのシェアは約60%、半導体精密石英事業の同国市場でのシェアは約40%を占めている。このことから、フェローテックは、中国で成長してきた日本企業といっても過言ではない。

フェローテックは中国で急速に成長しているものの、中国市場の成長についていけず、資本市場でも半導体業界でもトップメーカーの仲間入りを果たすことができなかった。2020年度(2020年3月31日〜2021年3月31日)の決算によると、営業利益は54億1500万元にとどまった。

もっと多くの子会社を中国で上場させたい

現在の中国半導体産業の発展加速のチャンスをつかんで、業界トップの大工場に追いつき追い越すことがフェローテックの現在の喫緊の発展目標となっている。ここ数年、フェローテックは中国への投資ポートフォリオを加速しており、国内にはすでに11の生産拠点、30社余りの子会社を持っている。

フェローテックの最も優れた戦略は、中国資本市場の力を借りて発展を加速させることだ。半導体シリコンウエハー事業を手掛ける子会社の中欣晶圓を例にとると、フェローテックは2002年に半導体シリコンウエハー業界に参入しているが、世界のシリコンウエハー市場は信越化学やSUMCOなど大手5社が主に握っている。2020年初め、フェローテックの事業部から独立した会社であった中欣晶圓は、2021年3月にPre-IPOラウンド融資を開始し、30億元の資金調達を行い、同社の12インチシリコンウエハーの生産能力を月10万枚から20万枚に引き上げた。フェローテックの時価総額61億元と比較すると、評価額はすでに118億元に達しており、前者を大きく上回っている。フェローテックは資金を得て生産能力を拡大するだけでなく、良好な投資リターンを得ることができており、フェローテックの賀賢漢社長は「5年でトップグループに追いつきたい」と自信をのぞかせる。

したがって、中国の資本市場が半導体企業に与えた高い評価にフェローテックは心を動かされ、中国の資本市場に全面的に進出することが同社の重要な発展戦略となった。フェローテックは富楽徳以外にも、傘下の中欣晶圓など多くの半導体子会社の上場を推し進めている。

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