研究院オリジナル 2024年4月前半、中国メディアの報道や評論は主に以下の中日経済関係の内容および日系企業について多く取り上げた。

日本車は固体電池で競っている中国車メーカーの助けを得られるか?楽観視は禁物!

中国の電気自動車(EV)との競争において、固体電池は日本車メーカーにとって局面を転換させるチャンスであり、トヨタや日産、パナソニックはいずれも固体電池の開発において、程度に差はあれ成功を収めたと発表している。しかし、目を向けるべき点として、中国車メーカーも固体電池に関して手をこまねいているわけではなく、2023年5月時点で、世界における固体電池の基幹技術の特許申請件数で中国が占める比率は36.7%に達している。最近5年間で中国による固体電池の特許申請件数は年間平均で20.8%上昇しており、増加率は世界でトップだ。公開されている情報によると、中国科学院のチームが開発した新型固体電池は、エネルギー密度が現時点で最先端のリチウム電池を30%も上回っている。

より重要な問題は、固体電池が巨大な市場の土壌と産業環境を必要とし、基礎研究から商用化まで一連の大きな挑戦に直面していることであり、原材料から基材までの生産やセル/電池パックの組み立て、電池生産から電池回収までのライフサイクル全体を網羅した産業チェーンを構築する必要がある。現在、産業エコロジーの育成において米国や日本、ヨーロッパには多くの不足点や短所があり、このゆえに日本は固体電池をすでに開発しているにもかかわらず、その量産を2028年まで待たなければならない。しかし、中国にはこの分野において優位性がある。例えば、広汽集団は車両への全固体電池の搭載を2026年に実現することをすでに発表しており、トヨタや日産が以前に発表した量産時期よりも1~2年早い。

また、固体電池の製造コストは非常に高く、そのコストはリチウム電池の4倍以上になる見込みであり、コストを下げなければ商品化は難しいが、コスト削減の面でも中国企業は伝統的な優位性を持つ。

さらに過激な視点とはいえ、固体電池は日本車メーカーの起死回生の武器ではなく、むしろ中国の電動自動車が日本の従来型燃料自動車の土台を揺るがす兵器なのかもしれない。

日系企業が50億元で中国の老舗漢方ブランドを買収

4月4日、三井物産とロート製薬は、香港で100年を誇る漢方ブランド「余生仁」の株式の86%を46億4000万元で購入したことを発表した。残りの14%の株式は、三井物産が2024年6月までに買い付ける予定だ。

近年、日系企業による中国の老舗漢方ブランドの買収が行われている。ある分析によれば、買収に対する日系企業の関心が高まり続けている主な理由は以下の2点だ。1つは「中国老字号」のブランドと処方の価値に注目していることだ。例えば、余仁生は香港やシンガポール、マレーシアなどで176店の小売店、29カ所の診療所を展開しており、ブランドの高い知名度を有する。また余仁生は140年以上にわたって営業を続けており、漢方に関して多くの秘伝の処方を蓄積している。もう1つは、漢方の原材料の調達ルートを確立していることだ。原材料は漢方の品質を左右する基幹的要素であり、中国は日本の漢方薬原材料の主要な輸入先だ。余仁生が薬種の供給元からの調達ルートを確保していることも、日本の漢方薬企業が注目している重要なポイントだ。

化粧品ブランドのコーセーが中国市場で挫折

日本の化粧品ブランドのコーセーが14年にわたって運営し、計88万5000人ものファンを集めた天猫(Tモール)の旗艦店が2024年4月19日に営業を終える。これより前に、コーセーの公式オンラインショップが2023年8月31日に販売を終了した。コーセーは中国市場に真っ先に進出した外資系化粧品ブランドの一つで、中国市場に進出して36年になる。

コーセーは早い段階で実店舗の経営に見切りをつけてインターネット通販に転換したが、思ったような業績を残せなかった。同社の天猫の旗艦店内では現在、売れ行きが好調なMAKE KEEP MIST以外の商品は販売数が最大でもわずか100個余りだ。

コーセーグループは外部に対して今回の販売チャネルの閉鎖は戦略的な調整と発表しているが、これは事実上の中国市場での敗退だ。2023年の財務報告によると、同グループのアジア太平洋市場での売上は前年比34.7%減だったが、その主要な要因は中国大陸での業績悪化だ。同社は中国での業績が悪化した主な原因として、核処理水の排出後、日本の商品に対する中国消費者の人気が下がったことを挙げている。

日系企業だけでなく、米国系や韓国系の化粧品会社も近年の中国市場での業績は同じく芳しくない。昨年、米国の化粧品ブランドのベネフィットは、天猫や京東、ティックトックなど複数の通販サイトの自社公式旗艦店を閉鎖した。ロレアル傘下の化粧品ブランドのメイベリンも中国におけるすべての実店舗の営業を終えた。米国トップ4に入る化粧品ブランドのe.l.fも中国市場からの撤退を発表した。韓国の化粧品ブランドのイニスフリーやスキンフード、ザ・フェイスショップなどのブランドも続々と中国市場を去っている。

業界内での分析によると、中国の化粧品市場は長年を経て急速な成長を遂げたが、今ではすでに飽和状態に近づいているため、市場競争が非常に熾烈であり、特にミドル・ローエンド市場では、中国の国産化粧品ブランドが台頭し、外国ブランドは苦戦を強いられている。市場の変化に直面した時に、一部の老舗化粧品ブランドはすぐに対応することができなかったが、これこそコーセーが敗退した根本的な原因だ。

日系老舗百貨店が敗退、新たな小売りが台頭

2024年に入ってから、伊勢丹百貨店は中国にある3店舗の閉店を相次いで発表した。その3店舗とは、上海市梅龍鎮店、天津市南京路店、天津市浜海新区店だ。現在、中国国内に存在する伊勢丹百貨店は2021年に開業した天津市仁恒店のみだ。同社の業績データによると、天津市伊勢丹の2022年度の赤字は2億9300万円で、上海市梅龍鎮店は2023年3月から11月までの期間、赤字額が3億7600万円だった。

伊勢丹は1993年に正式に中国国内市場に進出し、中国市場の開拓において日系百貨店の代表格だった。しかし、同社は今では中国市場における日系百貨店敗退のシンボルに成り下がっている。

実のところ、これは伊勢丹自体の問題ではなく、時代の流れによるものだ。百貨店という業態がすでに現状の市場環境に馴染まなくなっており、発展の著しい通販やショッピングモール、アウトレットなどの業態が次第に百貨店にとって代わっている。日系企業であれ、中国系、欧米系企業であれ、百貨店の閉店ラッシュはすでに不可逆的なものになっている。わずか過去1年間で、天津市和平路の百貨店や上海市の太平洋百貨徐匯店、広州市の天河城百貨北京路店、北京当代商城など中国の著名な百貨店が閉店している。

しかし、老舗日系百貨店が撤退するのと同時に、新興の日系リテール企業の実体勢力が中国市場で徐々に成長し始めている。例えば、2021年に三井不動産と金橋股份が共同で開発したららぽーと(LaLaport)上海金橋ショッピングモールは、インフルエンサーの人気スポットになった。阪急百貨店と杉杉集団が提携して設立した寧波阪急は、今では寧波市の超大型ショッピングセンターとなっており、人気も上々だ。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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