『ウィークリー日本企業観察』

研究院オリジナル 近年、中国からの外資撤退がトレンドになっているようだ。商務部のデータによると、2022年以降、中国で実際に活用されている海外資本は三年連続で減少しており、2023年は8%、2024年は27.1%、2025年1-6月は15.2%それぞれ減少した。


しかし、このような状況下で、日本の対中投資はむしろ情勢に逆行して増加しており、とりわけ人々からの注目を集めている。


7月19日、商務部の最新データによると、2025年1-6月、日本の対中投資は59.1%と大幅に増加した。さらに、中国日本商会が2025年6月9日に公表した『中国経済と日本企業2025年白書』によると、2024年第4四半期、16%の日本企業が、対中投資が「大幅に増加」又は「増加」したことを明言し、42%の企業が対中投資を維持するという意思を示しており、両方の合計は2024年以降の最高を記録した。


2025年6月16日、ルパート・フーゲワーフは外資系製造業による対中投資上位30社を発表したが、そのうちの7社は日本企業で、その投資規模は国別でトップだった。


ウォッチャーの分析によると、今回の日本における対中投資ブームの主な要因は中日関係の回復にある。


中国日本商会が公表した『中国経済と日本企業2025年白書』によると、2025年3月、東京で実施された第6回中日経済ハイレベル対話が終了した後、中国政府が発表した20項の重要なコンセンサスに、「中日ビジネス環境改善活動チーム会議」の開催などの措置が含まれており、それは日本企業の投資にとって重要な意味がある。3月22日、東京で開催された中日経済ハイレベル対話は、2019年以降初の実施であり、いわば氷を砕く旅と言うことができる。


中日関係の回復と米国が引き起こした貿易戦争は密接に関係している。米国が振るう関税というムチに共に脅かされている中、貿易の安全という見地から考慮して、中日双方は互いに経済協力を強化することによってリスクに対処する必要がある。この他に、石破茂氏が首相に選ばれたことも大きく関係しており、石破氏はこれまでずっと親中派と目されている。


しかし、アナリストは、将来の不確定要素も依然存在することを指摘している。第27回参議院選挙が終わり、執政党である自民党が選挙に惨敗したため、石破首相が辞職する可能性があり、日本の政界における情勢の変動は中日貿易関係に大きな影響を及ぼし、中日間の貿易に波風を立たせる可能性がある。


日本の小企業が成長できるチャンスは中国にあり


中国の日系企業に次のような現象が見られている。大手企業に部品を供給している一部の小企業は、主導企業の手掛けるプロジェクトに伴って中国に進出し、主導する日本企業からの注文を専門に受けていたが、後に中国国内サプライチェーンに溶け込む過程の中で、徐々に中国国内企業からの注文を受け始め、中国の巨大な市場規模によってこれらの製品サプライヤーが少しずつ小さな工場から大企業へと発展している。


杭州神林電子有限公司はその代表例とも言える企業だ。この日本が投資する中外合弁企業は1994年に設立され、最初の頃は日本企業だけに部品を供給していたが、その後ハイアールや美的、方太、科勒などの中国顧客を開拓し、徐々に中国市場で発展を遂げている。現在、同社は浙江省ハイテク技術企業に属し、製品は中国の著名な家電メーカーに販売されており、また東南アジア各地にも輸出されている。


中国で重要な一歩を踏み出した横浜ゴム


近ごろ、横浜ゴムは同社の合弁会社である山東横浜橡膠工業製品有限公司(YRSC)の残り株式22.98%の追加取得を正式に完了した。これによって、YRSCは横浜ゴム傘下の完全子会社になった。


業界は、今回の取り組みが決して単なる資本運用ではなく、むしろ同社が「ヨコハマ・トランスフォーメーション2026(YX2026)」グローバル戦略を展開する中で、アジア、特に世界最大のタイヤ市場である中国で競争力の強化と拡大を図るために踏み出した重要な一歩と見ている。横浜ゴムが深い基盤を築いている日本国内市場は、成長が鈍化した成熟市場であるため、中国をはじめとする新興市場に目を向けることは、(同社にとって)避けて通れない選択となっている。


中国は世界最大のタイヤ消費国であると同時に、新エネルギー自動車発展の推進役でもあり、これらの要素は高性能でエコなタイヤ製品に巨大な需要の増加をもたらしている。横浜ゴムは全額出資によって中国の資産を管理することで、より正確に市場の動向を把握することができ、中国消費者の好みおよび自動車メーカーのニーズに焦点を合わせて、カスタマイズされた製品の開発と生産を行うことによって、ミシュランやブリヂストンなどのグローバル大手との競争において機先を制している。


この他に、横浜ゴムはインドやインドネシアといった他のアジア市場を将来的な成長のコアエンジンと見ている。中国市場での開拓の成功を通じて、同社は中国で実証された「現地化戦略」をアジア全体で応用し、中国を製造および開発の中心として、地域全体に広がる強大なタイヤ事業ネットワークを構築する見込みだ。

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