【毎週日系企業ウォッチ】


研究院オリジナル 対中投資が逆風の中で55.5%急増し、日系企業は中国への回帰を加速/トヨタ自動車社長が中国メディアに答える。「いかにして中国でより良い自動車を造るか?」/日系企業が中国の地方で産業クラスターを育成。


投資が逆風の中で55.5%も急増!日系企業はなぜ中国への回帰を加速しているのか?


欧米資本を含む西側資本が相次いで中国から撤退している中、日系企業は中国市場への回帰を加速させている。中国商務部(省)のデータによると、今年1月から9月までの全国の実際の利用外資は引き続き減少し、前年同期比10.4%減となったが、日本の対中投資は逆風の中でも55.5%急増し、すべての国・地域の中で最も高い伸び率となった。


もちろん、これほど高い伸び率は「低いベース」によるものでもある。2021年以降、日系企業の対中投資規模は年々縮小し始め、2024年には5100億円まで落ち込み、ピーク時の4割にも満たない、「半減」とも言える急落となっていた。


注目すべきは、今回の日系企業の投資増加は「広範囲に展開する」ものではなく、グリーンエネルギーとハイエンド製造、スマート製造と自動化、サービスと研究開発センターの3大分野に焦点を当てており、地域的には広東省、江蘇省、上海などの産業集積地に集中している点である。


グリーンエネルギーと新エネルギー自動車部品への投資ブームは、中国の「二酸化炭素排出ピークアウトとカーボンニュートラル」目標と新興産業の成長メリットに密接に関連している。スマート製造分野での深耕は、中国の完備された産業チェーンによるサプライチェーンを背景に効率の最大化を実現している。研究開発センターの拡張は、日系企業が中国に根を下ろし、市場に近い場所でイノベーションを行うという決意を示している。このような位置付けは、日系企業の技術優位性を発揮するとともに、中国市場の需要アップグレードに的確に対応している。


当研究院は、日系企業の「逆張り」は、本質的には中国市場の真の価値に対する再確認であり、その背景には、政治環境の改善、市場優位性の顕在化、リスク分散需要という3つの論理が重なっていると分析する。


政治面では、これまでの中日関係の改善によるビザ免除、水産物輸入再開などの措置が、企業投資に友好的な雰囲気を醸成し、投資増加の「触媒」となった。市場面では、中国の14億人口の消費市場と完備されたサプライチェーン・システムが、代替不可能な中核的優位性を構成している。リスク管理面では、米国の関税政策の不確実性から、中米両地域に配置を選択することが、日系企業にとって経営リスクを分散し、サプライチェーンの安定を確保する合理的な選択となっている。


トヨタ自動車社長、中国メディアに答える。「いかにして中国でより良い自動車を造るか」


最近、2年に一度の日本モビリティショーで、トヨタ自動車の佐藤恒治社長が中国メディアと、いかにして中国でより良い自動車を造るかについて議論し、二つのキーワード――「スピード」と「信頼」を提示した。


佐藤氏は、「中国は世界で電動化とスマート化が最も急速に進んでいる地域であり、この市場での自動車メーカーにはスピードが極めて重要である」と考えている。そしてトヨタが中国市場の発展速度に追いつくためには、現地化が必要である。中国のパートナーとチームを信頼し、RCE(地域チーフエンジニア)に制約を設けず、彼らが現地市場の需要に基づいて提案するようにすること、「彼らが、これが中国の消費者が好む車だと言えば、私は100%信じて彼らにその車を開発させる」と述べた。


佐藤氏はまた、「中国市場の特殊性は、中国の消費者は“感度”が非常に高く、スマート体験と高級感への追求ではすでに世界をリードしている」と指摘し、もう一つの根拠として、トヨタのレクサスは中国で数少ないプラス成長を達成している輸入高級ブランドであることを挙げた。


ある日系企業が中国の地方で産業クラスターを育成


江蘇省宜興市に、北海封頭有限公司という日系企業がある。30年の歳月をかけて、宜興に完全かつハイエンドな封頭(ヘッド、鏡板)産業クラスターの構築を推進し、日系企業の中国における発展の一つの模範となっている。


1990年代初頭、中国の圧力容器に組み合わせるヘッド産業はまだ比較的遅れていたが、中国の圧力容器メーカーの半数以上が江浙滬(江蘇・浙江・上海)地域に集中し、宜興はその地域の中心に位置していた。1994年、日本の北海鉄工所は宜興で北海封頭公司設立に投資。この会社は自社の発展拡大だけでなく、技術の波及、資源の統合、エコシステムの構築を通じて、地域産業クラスターの形成を推進した。


北海封頭公司は、日本北海鉄工所が世界で初めて開発した冷間プレス工法を導入し、中国のヘッド生産技術を国際的な先進レベルへと躍進させた。さらに、中国のヘッド業界標準と国家標準の策定を主導、これは中国における外資系企業ではあまり見られないことである。


北海封頭公司は産業クラスターのチェーンオーガナイザーとなった。北海封頭は、太原鋼鉄などの原材料サプライヤー、林泰金属などの関連企業の追随を促した。2025年、同社は「産業チェーン協力深化」計画を開始、38のサプライチェーン企業を招へいし、原材料、設備、検査などの各プロセスの現地調達を推進、宜興はヘッドの全産業チェーン基地としての地位をさらに固めた。


北海封頭公司はまた、産業人材の育成基地ともなった。会社設立30年来、累計数千名の生産、管理、マーケティング人材を育成し、ヘッド製造の全工程をカバーし、「北海系」人材ネットワークを形成した。九洲封頭、華威封頭など多くの現地ヘッド企業の技術中核、マネジメント人材は、かつて北海の従業員であった。


北海封頭のリーディング効果により、宜興市万石鎮は40社以上のヘッド企業、年間生産高300億元を超える産業クラスターを形成し、全国の業界総生産高の20%以上を占め、全国最大のヘッド生産製造企業集積地域となり、万石鎮は「中国封頭の郷」と呼ばれている。

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『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。


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