研究院オリジナル 2024年4月後半、中国メディアの報道や評論は以下の中日経済関係の内容や日系企業について多く取り上げた。

ホンダの純電気自動車の新ブランド「燁」は新たな時代を切り開くか? 

2024年第1四半期、ホンダの中国における販売台数は前年比6.11%減だった。市場圧力がいっそう増大する中、ホンダは4月16日に中国市場向け電気自動車の新ブランド「燁」(Ye)を大々的に発表し、今回の新ブランドの立ち上げを「新しい時代の幕開け」と称した。

今回、ホンダは「燁」ブランドの三車種を発表したが、そのうちの二車種はSUVで、2024年末に量産および発売に入る見込みだ。もう一つの車種は2025年に発売される予定であり、2027年までに、「燁」ブランドの車種のラインナップが6車種に拡充されるという。2022年、ホンダは同社初の純電動モデルのe:NP1とe:NS1を発表したが、これらの車種の売れ行きは低空飛行を続けている。業界ではこれらの車種は基本的に間に合わせ的な過渡製品とみなされている。

「燁」が最も注目を集めたところは全面的な現地化だ。ホンダ中国の五十嵐雅行本部長は、「燁」ブランドが「中国のチームのみの主導による設計」、「中国市場で世界初公開」、「中国専用」であることを明らかにしている。そして、ホンダが以前に発表した純電気自動車ブランドと比べると、「燁」ブランドは中国のチームが単独で開発することによって、中国の純電気自動車市場により精通した製品を製造することを保証している。

同時に、「燁」ブランドは全面的に中国国内の産業チェーンに組み込まれている。寧徳時代、ファーウェイ、航盛電子、科大訊飛の中国のトップ部品サプライヤー4社が、「燁」ブランドの協力企業リストに入っている。ホンダはこれまで主に自社開発技術を採用してきたが、今回は中国国内で最強のサプライヤーと協力する道を選んだ。その理由は電動化やスマート化の技術の面で中国のサプライヤーにより大きな競争力があることを見て取ったからであり、そうすることでホンダはより早く「中国のペース」についていくことができる。

この他に、「燁」ブランドは世界に先駆けて新しい「H」のロゴを使用する予定だが、そこにもホンダが「燁」に寄せる熱い期待が現れている。

しかし、「燁」も巨大な試練に直面している。おびただしい競合他社により、中国の電気自動車市場における「過当競争」は深刻さを増すばかりであり、消費者の目を如何に「燁」ブランドに向けさせるかにおいて、ホンダは自社製品の価値を証明しなければならない。同時に、中国市場における価格競争は慢性化しているため、十分な販売台数を維持するのは容易ではない。この他に、日本の従来型燃料油自動車は中国市場で依然として高い人気を誇っているが、電気自動車の分野となると、市場は日本車を保守的で時代遅れな存在と見ている。

さらに、ホンダが「燁」という文字をブランド名として選んだことは、同社が中国市場に対する深い理解を持ち合わせていないことを示しているという声もある。「燁」という字は普段あまり使われない文字で、多くの人々にとって正確に発音するのが難しく、またこの字は火と関係があるため、電気自動車にとって最も恐ろしい事故である発火を連想させ、さらにこの字を「火化(火葬の意味)」と受け取る者もおり、これらはみな中国人が非常に忌み嫌うものだ。

「機はすでに熟した」ヤマシタが中国のヘルスケア産業への参入に注力

3月28日、ヤマシタは山下(上海)養老服务有限公司を設立した。同社の総投資額は約1億2000万元で、同社が中国に単独資本の企業を設立するのはこれが初めてだ。

ヤマシタは福祉用具レンタルおよび介護向け住宅改修を主に手掛けている福祉用具レンタル業界の大手企業だ。2020年1月から、ヤマシタは中国市場に参入し、上海に合弁企業を設立して、現地の高齢者向けに福祉用具を提供し、その後同社は上海市民生局が指定する福祉用具レンタルサービス業者の初期メンバーに入ったが、同社は当時、唯一の外資企業だった。

政府からの助成があるとはいえ、市場の開拓は容易ではない。日本と違って、中国の高齢者およびその家族の福祉用具レンタルに対する認知度は低く、また従来の車いすなどの福祉補助具の市場価格は非常に安いため、リースの値段は新品の購入よりも割高になる。介護用電動ベッドや電動車いすなどの日本製の高級福祉用具は、リース料が高く、やむを得ない状況になってはじめて使用するケースが多い。上海で暮らす75歳以上の高齢者は約155万人だが、2022年に上海全域で受託した注文数はわずか約2600件だ。

ヤマシタは中国市場に対して、相応の調整を図っている。同社は福祉用具レンタル以外に、2021年から上海で介護向け住宅改修や認知症に特化したサービス、在宅リハビリ、栄養管理食などの業務を開始しており、これらの業務は多くの高齢者の間で好評を博している。

中国における人口の高齢化のペースが加速するにつれて、市場も徐々に成熟に向かっている。現在、ヤマシタは当初の模索がひと段落したと感じており、同社が開拓を加速する時期はすでに熟している。

20年早く中国に進出したイケアがニトリに敗北

今年3月末時点で、「日本のイケア」の異名を持つニトリが中国国内での店舗数を95店まで伸ばし、イケアの店舗数の2倍以上となった。北京、上海、広州、深センなどの一級都市以外に、同社はさらに蘇州や厦門、成都、武漢、重慶など二級都市にも進出しており、また南通や東莞といった三級都市でも、ニトリを見かけるのは珍しいことではなくなっている。

ニトリは2014年に中国に進出したが、その一方でイケアは1998年に中国への進出を果たしており、ニトリよりも約20年早い。イケアが中国に進出した後、長期にわたってイケアは中国の若い中産階級が家具を購入する際の第一候補として君臨した。では、後から来たニトリはどうやってイケアを追い越したのか?

まずニトリは正しい進出経路を選択した。イケアが常に自社の重心をオフラインに置いていることを鑑みて、イケアに遅れて中国に進出したニトリは、突破口としてオンラインに狙いを定めた。同社は2015年にタオバオで営業を開始し、そして2020年に京東に店舗を構えた。天猫では、購入金額299元以上で送料を無料にし、家具類などの一点もの商品は購入金額が1490元以上の場合、設置料も込みとしている。明らかにニトリは中国国内通販でのやり方を理解している。

それに引き換え、イケアのオンライン事業は展開がかなり遅い。イケア中国は2008年に本部に対してネットショップの設立を提案していたにもかかわらず、2020年になってようやく天猫に旗艦店が開設された。

しかし、ニトリの最も重要な競争力は「安さ」だ。同等の品質および寸法の家具でも、ニトリの販売価格は他の家具小売店のわずか半値だ。イケアの価格も十分に安いが、それでもニトリの価格はイケアの7割から8割だ。

ニトリが台頭した時期は、日本経済が長期的な低迷に陥っていた頃であり、中産家庭が続々と支出を切り詰めていたため、コストパフォーマンスが最大の正義だった。ニトリはまさにこのコストパフォーマンスによって一度、イケアを日本市場から追い出したことがある。

現在、中国の中産階級の収入増加は伸び悩んでおり、「節約に励む日々」は将来的に、一般家庭の普遍的な状況と化すことだろう。今後、中国におけるニトリの前途は有望だと言えるかもしれない。

日本のフォトレジストの対中輸出における大幅な反転増は一時的な現象に過ぎない可能性

日本のフォトレジスト企業が世界市場で占めるシェアは一時80%に達し、ほぼ独占状態を形成していた。しかし、最近の税関のデータによると、日本のフォトレジストの輸出額に減少が見られているという。

数ある輸入国のうち、日本のフォトレジストに対する中国の輸入額は逆に上昇に転じており、輸入額がトップにとどまっている上に、日本のフォトレジストが占める比率が30%近くに達している。これに対して、米国や韓国、台湾などの地区の輸入額は程度に差はあれ減少しているが、その主な要素となっているのは、近年の世界的な貿易保護主義の台頭であり、様々な貿易障壁が次々に設けられている。

中国では半導体産業が猛烈な勢いで発展しており、フォトレジストなどの基幹材料に対する需要がますます高まっている。日本のフォトレジストはその卓越した性能と安定性で、中国市場で人気を博している。しかし、あるメディアは、中国に輸出される日本のフォトレジストの単価が比較的に安いことは、半導体材料の購入において中国が強い価格交渉力を持っていることを示しており、また中国企業がフォトレジストという基幹材料の自主開発および生産の実現に向けて継続的な努力を払っているため、今後日本のフォトレジスト企業が受ける圧力はますます大きくなることにも目をとめるべきだと指摘している。

大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

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