『必読』ダイジェスト 中国ドイツ商工会議所が12月4日に公表した『2024/25年度ビジネス信頼度調査レポート』(以下、レポートと略称)によると、中国でビジネス展開するドイツ企業の経済見通しは昨年と比べてより悲観的で、2025年の事業見通しを下方修正していることが分かった。


レポートによれば、調査に回答した企業の60%が「2024年の中国経済は昨年より悪化している」と認識している。また、33%の企業は「2025年の経済状況はさらに悪化する」と考え、20%の企業は「この状況が5年後まで続く」と予測している。


中国ドイツ商工会議所華東・華中地区理事会のクラス・ノイマン(Clas Neumann)理事長はブリーフィングで、中国のファンダメンタルデータを示したうえで、「中国は高い生産性を有する社会であり、中産階級が増えているが、いくつかの構造的課題も抱えている」と述べた。中国は生産主導型経済から消費主導型経済への転換を図りつつあるが、これには消費マインドへの高い信頼性が必要で、未だ解決されない不動産市場の問題が消費の低迷を引き起こしており、「これらの問題は今後1~3年間続く」と指摘する。


調査に回答した企業のうち、「今年、所属する業界が成長している」と考える企業はわずか15%で、「2025年には発展する」と予測する企業は32%にとどまった。一方で55%の企業が「今年は業界の状況が悪化している」とし、29%の企業は「来年も引き続き悪化する」と予測している。


中国ドイツ商工会議所華北・東北地区のオリバー・エームス(Oliver Oehms)執行役員兼理事は、「消費者向け業界は現在消費マインドが不振で、自動車産業やB2C(Business to Customer)の製造業者およびサービス提供者などが特に悲観的だ」と述べた。一方で、ドイツが優位性を誇るグリーン・トランスフォーメーション(GX)やエネルギー効率、再生可能エネルギー分野の企業は今後のビジネス見通しに楽観的な態度を示している。


レポートによると、56%の調査回答企業が「中国市場の需要低迷」を「最大の商業的課題」と認識し、次いで「価格競争の圧力」(52%)を挙げている。昨年1位だった「人件費の増加」は33%に下がり、3位となった。規制上の課題では、「政府の調達部門が製品を中国国内企業製造品に限定する“国産品購入”要件」が、回答企業にとっての主要な問題と認識される割合が昨年より8ポイント増加し29%に達した。また、26%の企業は「国内企業が受ける優遇措置」を重大な課題と見なしており、「知的財産権保護が不十分」とする企業も26%にのぼった。


自動車や電子機器などの分野は、中国のイノベーターからの挑戦に直面している。調査回答企業全体の8%が「中国企業がすでに業界のイノベーション・リーダーになっている」と認識し、この割合は昨年の5%から上昇し、2019年の0%から大幅な伸びを見せた。特に自動車業界ではこの傾向が顕著で、12%の回答企業が中国の競合企業をイノベーション・リーダーと見なしている。さらに、55%の企業は「今後5年以内に中国企業が業界のリーダーになる」と予測し、この見方は自動車業界(65%)、化学工業(61%)、機械工業(50%)で特に多かった。


レポートによれば、39%の企業は「中国市場の魅力が低下した」と感じている一方、49%は「変化なし」、12%は「魅力が上昇した」と回答している。特にイノベーション市場として中国を評価する際、14%の企業が「魅力が低下した」と回答した一方で、42%が「変化なし」、44%が「魅力が上昇した」と回答している。「中国市場はそのイノベーション能力と規模で依然として魅力的であり、中国市場での事業展開は企業がグローバルな競争力を維持するための必要条件と見なされている」とノイマン氏は述べる。


こうしたなか、92%の調査回答企業が引き続き中国で事業展開する計画を有し、51%の企業が投資を増やす意向を示しているが、その比率は昨年より10ポイント減少している。中国ドイツ商工会議所のマクシミリアン・ブテック(Maximilian Butek)執行役員兼理事は、「従業員数が1000人以上の大企業では70%が対中投資を増やすと答えているが、従業員が250人未満の中小企業では44%にとどまる」と述べた。投資を増やそうとする企業のうち、87%が「競争力の維持」を主な動機に挙げ、この割合は昨年より8ポイント増加している。


ドイツ企業は中国での競争力を向上させるため、さまざまな方法を採用している。調査回答企業の50%が「中国のパートナーや顧客との協力」を選択し、45%が「研究開発分野への投資」を増やしている。また、40%の「企業が本社から独立して活動すること」を選択し、この割合は昨年より11.6ポイント増加した。他に、「生産能力への投資」(29%)や「デジタル化」(26%)を選ぶ企業もあった。


同時に、中国で事業展開するドイツ企業は、リスクを軽減するためさらなる現地化戦略を進めている。「現地化は現在、規制要件だけでなく、地域市場の動向によっても推進されている」と中国ドイツ商工会議所は指摘する。レポートによると、71%の調査回答企業が「中国で、中国のために」というアプローチを採用し、一部の企業は「事業展開時に現地化思考を採用」(40%)、「中国での研究開発を加速」(31%)、「上級管理職の現地化」(31%)などを進めている。


レポートは、調査回答企業が「国有企業改革」(47%)や「民間企業支援」(44%)などの分野でさらなる進展を期待していることを明らかにしている。また、44%の企業が「クロスボーダー・データ伝送に関する規定の緩和」を望んでいる。中国ドイツ商工会議所は、中国がドイツ企業により多くの優遇政策を実施し、平等な待遇を提供することを呼びかけた。ノイマン氏は「ドイツ企業は中国政府に経済刺激策の実施や外資企業への差別撤廃を期待する」と述べ、公開入札への参加や業界基準の策定への関与などを求めている。


中国ドイツ商工会議所は現在2100人以上の会員が所属する、中国におけるドイツ企業の公式団体である。今回の調査は2024年9月3日から10月8日にかけて実施され、機械および産業設備分野が37%、自動車産業が16%、そのほか商業サービス、電子製品、消費者製品分野の企業も含む546名が回答した。


(『日系企業リーダー必読』2024年12月20日の記事からダイジェスト)

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