『ウィークリー日本企業観察』
研究院オリジナル 三菱自動車が完成車およびエンジンを含む中国での生産を完全に終了したことに関して、別の解釈があるだろうか?ユニクロ系列ブランドGUの中国事業縮小は、「背より腹」ということなのか?日系自動車メーカーが全体的に振るわない中で、トヨタは奮闘しているが、同社の取り組みの何が良かったのか?
三菱自動車の中国生産「終了」は表面的に見れば失敗、
しかしその根底にあるのは拒否
7月22日、三菱自動車は、瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司との合弁関係の解消および事業運営の終了を発表した。三菱自動車は2023年に中国での完成車製造業務を終了していたとはいえ、同社はその後も中国で引き続き他の自動車メーカーのためにエンジンの生産と供給を続けていた。しかし、今回の撤退は、三菱自動車による中国生産の完全な終了を示している。
多くのメディアは「失敗」、「電動化に追いついていない」、「ブランドの老化」といった表現を用いて三菱自動車の撤退を解説している。しかし、ブランドコンサルティング企業のウィーチャット・パブリック・アカウント「泳智無不言」は、三菱自動車の製品に難があるわけではなく、むしろ同社はもはや中国で、長期的にブランド価値を築くための土壌を得られなくなっていると見ている。同社は、長期的なブランドの形成が不可能で、付加価値を獲得できず、文化的共感が得られないのならば、たとえ製品を販売できたとしても、それは「ブランドを展開している状態」ではなく、「ブランドがその役割を果たすように促している」だけに過ぎず、そうであれば三菱ブランドは撤退したほうが良いと考えているはずであり、いわば「参戦を拒否」したと言える。
我々が思うに、上述の見解は観察の新たな視点を提供している。三菱自動車の失敗は他に類例のないただ一つだけの事例というわけではなく、むしろ合弁会社にありがちな苦境の一例だ。「メイド・イン・チャイナ」は「効率の圧縮」つまりコストの圧縮やサプライチェーンの短縮、在庫の削減、急速な普及、速やかなコピーに秀でているが、ブランドの構築は本質的に「時間の複利プロセス」であるため、中国の環境下で、外資ブランドの価値はいとも簡単に脇に追いやられる。同時に、合弁体制下の三菱自動車ブランドは、単独で自社製品やブランドイメージ、マーケティング・コミュニケーションを定義することができない。この他に、中国消費者のブランド認知を更新する速度はブランドが構築されるペースをはるかに上回っているため、中国消費者はますますブランドを重視するようになっているとはいえ、実のところ中国の消費者がより重視しているのは、それに「社交的価値」やアクセス数を稼げる見込みがあるかどうかであり、多くの人々の心の中にあるブランドの持つ意義は、そのブランドに対する長期的な共感ではなく、「注目の的になれるかどうか」だ。それゆえ、三菱自動車を代表とする「堅実、職人気質、長期構築型のブランド」は馴染むことができない。
ユニクロ系列ブランドGUの中国事業縮小は「背より腹」なのか?
ファストファッションブランド大手のファーストリテイリング傘下の低価格ブランドGUが中国市場で大きな挫折を経験している。広州唯一の店舗を閉鎖するという発表に続いて、上海市淮海中路に位置する同ブランドの中国1号店も最近正式に閉店のお知らせを張り出し、8月24日に営業を終了することを発表した。上海や広州の店舗を閉鎖した後、中国国内に残るGUの店舗は深セン市にある2店舗だけになり、そしてどちらもユニクロの店舗内に併設される形で営業している。
中国でGUがメインにしているのはコスパと若年層向け市場であり、同市場の競争環境は瞬く間に変化している。オンラインブランド以外に、一連の価格設定がGUと同等の中国国内ブランドもオフラインへの拡大を加速しており、より細分化されたスタイルやいっそう柔軟な出店戦略、高度に現地化されたマーケティング手法によって、速やかに市場を奪取している。
比較すると、GUはユニクロブランドのお墨付きを当てにしており、ユニクロの経験やリソースを直接吸収しているとはいえ、GUの意思決定は柔軟性がある程度制限されている。ファーストリテイリンググループは中国におけるリソースの重心を完全にメインブランドであるユニクロに集中させようとしているため、GUは中国での認知度が長期的に低空飛行しており、独立したブランドイメージを築く上で困難に直面している。
しかし、GUの中国市場における縮小は必ずしも不合理ではない。対照的と言えるケースはもう一つのファストファッショングローバル大手のGapグループだ。当時、同グループは中国でメインブランドのGapではなく、傘下の低価格ブランドであるOld Navyの普及に力を入れていたが、中国でOld Navyの認知度が極めて低いという現実を無視した結果、この戦略によってGapは中国で発展するチャンスを逃し、最終的に2020年に中国市場から完全撤退した。この観点から見ると、ファーストリテイリンググループがメインブランドのユニクロを保持し、GUを諦めたことは、「背より腹」という形の賢明な措置と見ることができる。
逆境の中で奮闘、トヨタの取り組みの何が良かったのか?
2025年上半期、外資系ブランドは中国の自動車市場で全体的に圧力に直面しており、特に日系ブランドの販売台数は9.9%下落し、市場シェアも2.6%減少した。しかし、このような逆境の中でトヨタは奮闘しており、その中でも一汽豊田の販売台数は16.3%も増加した。同社の取り組みの何が良かったのか?
アナリストによると、トヨタにとって最大のキーポイントとなったのは中国の自動車サプライチェーンのエコシステムに深く溶け込み、トヨタの生産販売体系を再構築できたことだ。中国市場において、トヨタはもはや製造を主導することなく、さらには設計を主導することもないにもかかわらず、供給周期を短縮できただけでなく、製造コストも大幅に削減することができた。トヨタのアジア地区CEOを務める前田昌彦氏も、中国のサプライチェーンがなければ、BEVのbZ3Xを発売することは全く不可能だったことを認めている。
中国市場だけでなく、タイの組み立てラインでもトヨタは中国で製造された部品の大量購入を開始している。最近、トヨタはタイ国内大手のSummitグループと中国の蕪湖躍飛新型吸音材料公司との合弁による工場建設を推進し、中国の同企業によってタイにあるトヨタの主要な生産基地に大量の電動自動車部品を提供する見込みだ。
次に、マーケティングで、より緊密に研究、生産、販売を一体化させた運営が成果を見せている。6月末に一汽豊田の販売会社が正式に北京から天津に移転したが、販売会社の新住所は生産基地との距離がほぼゼロの位置にあり、そのおかげで同社は市場の最前線に特化した需給管理、リソース配給など各方面における意思決定をより効率的かつ柔軟に行い、市場の変化に直ちに対応し、速やかに製品戦略を調整することができる。
この他に、トヨタはさらに目立たないとはいえ極めて重要な成長チャネルを隠し持っているが、それは並行輸出だ。データによると、2025年上半期、一汽豊田と広汽豊田が並行輸出(自動車貿易商がブランドメーカーからのライセンスを受けずに、中国市場から新車を購入し、実質的に新車の状態にあるこれらの自動車を中古車扱いで海外に販売する貿易を指す)した台数は合計4万9000台だ。正規ルートでの輸出ではないとはいえ、これらの車両も最終的な販売台数に計上されており、トヨタの全体的な販売台数の重要な増加要素の一つとなっている。アラブ首長国連邦をはじめとする輸入の集散地での需要は旺盛であり、カローラは輸入の「目玉」として最も人気を博している。
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