『ウィークリー日本企業観察』


研究院オリジナル ユニクロの「神器パンツ」は中国で大ヒットしただけでなく、中国のインターネットソーシャル・プラットフォーム上での「バズワード」となった。これは何を暗示しているのか?同じ広汽集団傘下でありながら、広州トヨタは逆風の中で急成長し、広州ホンダの業績は急落したのはなぜか?24年間にもわたって続く「無印良品」の商標をめぐる争いに、ウィンウィンの解決策はあるのか?


ユニクロのパンツは中国消費者に「神器」と称賛されている


ユニクロの「神器パンツ」は、中国のインターネットソーシャル・プラットフォーム上で「バズワード」となった。APPであるレッドブック(小紅書)における「神器パンツ」関連のクリック数は8億回を突破し、2024年以降だけでも、ユーザーが自発的に投稿した「ユニクロ神器パンツ」関連の投稿は7,000件を超える。ユニクロは中国で年間2,500万本以上のパンツを販売している。


芸能人の起用もなければ、広告による宣伝もない。ユニクロのパンツが、どのようにして中国消費者に「神器」と称賛されるまでになったのか?WeChat公式アカウント「毎日人物」が最近この件について分析記事を掲載した。


同記事は、人の体型差は主に腰腹部および下肢に集中して現れるため、自分に合ったパンツを選ぶのは容易ではないと指摘する。ある消費者の言葉を引用し、「標準的」な体型ではないためパンツ選びが非常に困難だったが、ユニクロの「カーブドパンツ」を1本買ったことでその探求の旅が終わり、「これを履くとまるで補正効果があるフィルターをかけているようだ」と述べている。なぜそうなるのか?記事は、ユニクロの神器パンツの「神」たる所以は、むしろその「平凡さ」、つまりゆったりと快適で、ベーシックで何にでも合わせやすく、普遍の人に適合しているからとしている。ある消費者は、人々が求めているのは実にシンプルだと考えている。それは太っていても痩せていても着られ、どんな服にも合わせられ、見た目が良くて高価ではなく、快適でスタイルが良いこととしている。


記事は続けて、アパレル業界関係者の話を引用し、このように一見単純でストレートなニーズを実現することは決して簡単ではないと指摘する。2016年、ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは米国ロサンゼルスに「ジーンズイノベーションセンター」を設立し、人体工学データに基づくミリ単位の大量の研究を実施した。ユニクロ「カーブドパンツ」の成功は、まさにその研究成果によるものだ。


本研究院は、ユニクロ「神器パンツ」の出現は、中国消費者の意識がある種の転換を始めている兆候だと見ている。物質が非常に豊かになると、一方で消費者の選択はますます困難になり、他方で企業もヒット商品を追い求める「内巻(過当競争)」に陥る。しかし、ヒット商品は本当に全ての人に合うわけではなく、大衆の普遍的な真のニーズはかえって満たされないことが多い。異なる年齢、職業、体型の人々が同じユニクロの神器パンツを熱烈に支持するのは、人々がもはや消費主義に翻弄されたくなく、「大海で失った針を見つけ出す」ような煩わしさに直面したくないことを意味している。企業にとって、ヒット商品という潮流が引いた後、真に生活に溶け込み、本質に回帰した製品こそが、市場において長く確固たる地位を獲得できるだろう。


トヨタの人間でホンダを救う、それは良いアイデアか?


8月7日、高洪祥(ガオ・ホンシャン)氏が李进(リー・ジン)氏の後任として、広汽本田汽車有限公司の取締役兼専務副総経理に就任した。業界では、高氏は危機的状況の中での起用と見られている。


現在、広州ホンダは中国における事業の「最も暗い時期」を経験している。近年の販売台数データを振り返ると、広州ホンダの販売台数は2021年に78万台だったが、2024年には47万台まで落ち込み、今年上半期は約15.5万台と前年比25.63%減となった。純利益も2020年のピーク時124億元から、2024年には18億元まで減少した。


周知の通り、中国市場では近年、日本車メーカーは電動化の大きな打撃を受けており、トヨタもホンダも電動化を改革の重点としている。李进氏自らがホンダのe:NPブランドの純電気自動車計画を主導し、「全領域極限改革」を提唱した。しかし、現時点での結果は、トヨタの販売台数が逆風の中で伸びているのに対し、ホンダの販売台数は急落しており、両者は鮮明な対照をなしている。


本研究院は、トヨタとホンダの明暗を分けたのは、表面的には製品や販売などの問題であるが、本質的にはその背後にある体制の問題だと見ている。両社はともに広汽集団傘下の合弁事業ではあるが、広州トヨタの体制では中国側経営陣の発言権が比較的大きいのに対し、広州ホンダはその逆であり、これが両者の経営意思決定行動に差異をもたらしている。


例えば、広州トヨタも広州ホンダもMomenta(モメンタ)、華為(ファーウェイ)など現地サプライヤーとの協力を強化しているが、広州トヨタはさらに「中国チーフエンジニア(RCE)体制」を実施し、現地化された新エネルギー車専用プラットフォームと新たな電子電気アーキテクチャの投入を予定しており、現地の産業チェーン体系に全面的に組み込まれようとしている。


一方のホンダは、今年の上海モーターショーでMomentaとの協力メカニズムについて説明した際、本田中国の幹部はメディアに対して、運転支援システムを「ホンダらしく」保つためにホンダが如何に主導権を握るかを繰り返し強調した。これに対し、トヨタは「中国流」であることを強調した。


明らかに広汽集団はこの問題を意識しており、後任の高洪祥氏は以前、広州トヨタエンジン有限公司の取締役兼副総経理を務めていた。広州ホンダにトヨタ出身の幹部が迎えられるということは、ホンダがトヨタの成功戦略を参考にして危機を乗り切ろうとしている可能性を示している。


誰の「無印良品」か?終わりの見えないが放棄もできない裁判


日本の株式会社良品計画と中国の北京棉田紡織品有限公司(北京棉田)の間の「無印良品」商標をめぐる争いはすでに24年間続いており、最近、中国最高人民法院は裁定を下し、中国企業による「無印良品」商標の合法的かつ有効な登録状態を引き続き維持する判断を示した。


本研究院は、この長期化する裁判の経緯を整理してみた。最も早くは2000年4月、海南南華実業貿易公司(現在は廃業)が商標「無印良品」を出願し、2001年に登録が認可された。当時、良品計画はまだ中国市場に進出していなかったが、この事態は良品計画の強い関心を引き起こし、直ちにこの商標に対して異議申立を行った。2004年に、中国国家商標局は裁定を下し、海南南華による同商標の登録認可を維持した。理由は、その商標が中国大陸内の関連商品において実際に使用されていなかったためだ。そして北京棉田はこの結果を見て、2004年に海南南華からその商標を買い取った。


2005年に、良品計画が中国大陸で初の店舗を開業し、ここから北京棉田との長年にわたる商標争いが始まった。繊維製品の国際分類第24類において、良品計画は2007年以降、計6回にわたり「無印良品」での登録出願を行ったが、いずれも成功しなかった。北京棉田も数度にわたる訴訟で反撃した。


国家知識産権局は両者に対して全体的にバランスを取る姿勢を示しており、現在形成されている構図は以下の通りだ。北京棉田が国際分類第24類(タオル、綿織物、バスマット、枕カバー等の製品に使用可能)を独占。一方、良品計画はこの分類以外のその他の分野で広範な商標権を有する。また、裁判所は北京棉田傘下の「無印良品」の名称を使用する2社に社名変更を命じた。北京無印良品投資有限公司は北京棉田網絡科技有限公司に、北京無印良品家居用品有限公司は北京無印工坊科技有限公司にそれぞれ変更された。


本研究院は、両社による長期の商標戦争は消費者を混乱させており、両社の商品を一切買わないと決める消費者もいるなど、両社にとって持続的なダメージとなっていると見ている。考え方を変え、歴史的な先入観を捨て、何らかの形で協力してウィンウィンの道を模索することが、真の解決策となるかもしれない。

大手企業を含む多くの日系企業が購読している『必読』

『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。

現在、『日系企業リーダー必読』の購読企業は、世界ランキング500にランクインした日本企業を含む数十社にのぼります。

サンプルをお求めの場合、chenyan@jpins.com.cnへメールをください。メールに会社名、フルネーム、職務をご記入いただきます。よろしくお願いいたします。

メールマガジンの購読

当研究院のメールマガジンをご購読いただくと、当方の週報を無料配信いたします。ほかにも次のような特典がございます。

·当サイト掲載の記事の配信

·研究院の各種研究レポート(コンパクト版)の配信

·研究院主催の各種イベントのお知らせ及び招待状

週報の配信を希望されない場合、その旨をお知らせください。