【週刊日系企業ウォッチ】
研究院オリジナル 近頃、中国のマーケティング専門家と著名なコンサルティング機関がそれぞれ、中日企業のビジネスモデルの差異、および日本企業が中国市場の変化に如何に適応すべきかについて、非常に価値あるアイディアとアドバイスを発表した。
中日ビジネスの根底にある4つの核心的な差異
中日両国は歴史文化的背景が根本的に異なるため、ビジネスの根底にある論理にも顕著な違いが見られる。この差異を深く理解することは、日本企業の中国における経営にとって重要な指針となる。このごろ、中国のマーケティング専門家である康有正氏がビジネスフォーラムで見解をシェアし、中日のビジネスモデルには以下の違いがあると指摘した。
第一に、直面するビジネス環境の違い。
制度面では中国は「原則+柔軟性」モデルを取り、結果志向が鮮明で、原則の実行はよりフレキシブルであり、手段や方法も重要だが、最終的には結果で成否が判断される。日本は「プロセス+修正」システムを信奉し、プロセス志向が突出し、プロセスの実行は厳格で、結果如何にかかわらず、まず既存の手順を厳密に遵守して推進する。
文化面では中国ビジネスは信用を重視するが、その安定性は比較的弱く、契約の締結と解除の速度が速い。日本は厳格な信用と契約精神の模範であり、安易に契約を結ばず、一度協力関係が構築されれば厳格に履行し、長期的で安定した協力を志向する。
効率面では中国市場は「即時対応型」で、企業は「一刻を争う」姿勢でスピードをもって発展の先機を制する。日本市場は人口高齢化と厳格なプロセスの影響を受け、「タイムラグ対応」の特徴を示し、全体の効率は相対的に低い。
第二に、向き合う消費市場の違い。
中国の消費市場は広大で地域差が顕著であり、複雑で多様な特徴を示し、消費者は新奇性を求め、市場の変化が速く、ブランド忠誠度は比較的低い。日本の消費市場は比較的均質で、消費者嗜好の共通性が強く、時間をかけて熱くなるスローマーケット型となっている。消費体験をより重視し、ブランド忠誠度が高く維持期間も長い。この差異に基づき、中国でマーケティングを展開するには「速さ」で突破口を開く必要がある――スピードが速く、投入集中度が高く、拡散のボリュームが十分でなければならない。消費者は企業に多くの時間を与えてはくれないため、速度が遅れれば運営コストの直接的な上昇につながる。
第三に、競争の方法の違い。
中国市場の競争は「熾烈な淘汰戦」といえるもので、全体として無秩序な特徴を示し、全産業・全業種・全カテゴリーに及ぶ。短期間で成功した事例が現れると、企業が「一斉に参入」し、ブルーオーシャンをたちまちレッドオーシャンに変えてしまい、同質化が深刻化する。競争では、無謀な価格競争や品質軽視などの行為もしばしば見られる。日本市場の競争は「偏移戦略とちょっとしたイノベーション」に焦点が当てられ、同じカテゴリーであっても、企業は明確な市場差別化を図る。そのため、日系企業の発展は自社の強みを深く掘り下げ、差別化路線を歩むことに重点が置かれる。
第四に、経営における価値観の違い。
中国企業は「大きくして強くする」という経営目標を堅持し、絶えず企業経営、創設者の能力、チーム運営の限界に挑戦し、積極的な規模成長を求める現実主義的価値観を持つ。日本企業は「継承とリスク管理」をより重視し、経営リスクを厭い、社会的責任と持続可能な発展を強調して、より堅実な経営スタイルをとる。
著名な国際コンサルティング機関が在中国の日系自動車メーカーに戦略的提言
9月24日、国際的な四大会計事務所の一つであるEY(アーンスト・アンド・ヤング)は上海で、「日系企業の中国業務における勝利の方程式――自動車産業の変革に焦点を当てて」を題とするセミナーを開催した。中国市場の急速な変化に日系自動車が如何に適応し、事業変革を実現するかについて、一連の戦略的提言を行ったが、その核心的な観点は以下の通りである。
第一に、協力の基盤を確固たるものにし、補完的な強みで突破口を開く。中国は世界の新エネルギー自動車発展の核心的なエンジンとなり、日本は自動車製造と部品分野で突出した強みを持つ。双方の補完性は極めて強く、協力の見通しは広い。激しい市場競争に直面し、日系自動車メーカーは変革の歩みを加速し、現地化戦略を深化させることで、初めて長期的で堅実な発展を実現できる。
第二に、協力モデルを再構築し、一方向の分業から双方向の協働へ。中日自動車企業は、伝統的な「一方向の分業」様式を打破し、「双方向の協働」という新たな構図へ転換する必要がある。日本の先進技術とグローバルネットワークを基盤とし、中国の巨大市場とイノベーションの速さを組み合わせ、第三国市場を共同開拓し、研究開発、生産、マーケティングまでのフルセットのバリューチェーンをカバーする協働エコシステムを構築する。
第三に、戦略的方向性を明確にし、4つの経路で成長を確実なものにする。中国における日系自動車事業は、4つの戦略的方向性に焦点を当てる必要がある。「一帯一路」市場を深耕し、海外での量的増加の空間を拡大する。合弁・協力モデルのアップグレードと最適化を推進する。核心技術の現地化を図り、市場競争力を高める。中国の「十五期五カ年」計画の先端分野に積極的に溶け込み、政策の利点を先取りする。
第四に、現地化を核心として堅持する。現地化は、国際的な自動車メーカーが中国で成功する唯一の道である。現地サプライヤー、スタートアップ企業との深い協業は、コスト管理能力と開発スピード向上の鍵となる。同時に、コスト、スピード、意思決定の全面的な現地化を実現する必要があり、これら三要素は日系企業が中国に根を下ろす核心的な支えとなる。
第五に、開発モデルに適合し、速いグレードアップ+品質保持を両立させる。中国の自動車開発モデルはスピードと市場志向を強調し、日本の堅実で体系的な開発モデルと鮮明な対照をなす。日系企業がイノベーション駆動型変革を加速したいのであれば、現地開発チームを編成し、組織体制を調整し、現地パートナーとのパイロット協力を通じて学習周期を短縮する必要がある。自らの品質優位性を維持しつつ、中国の「迅速なグレードアップ、持続的最適化」モデルを参考にし、市場変化に速やかに対応する。
第六に、サプライチェーンの障壁を突破し、早期参画+同時にサービスを提供する。日系企業が中国完成車メーカーの核心サプライチェーンに参入するには、価格、スピード、現地化の三要素を両立させなければならない。「早期参画」と「同時にサービスの提供」が特に重要である。研究開発・設計段階から共同開発に参加し、アフターサービスと技術サポートの段階で迅速に対応し、完成車メーカーの要求を全方位で満たす。
第七に、規制課題に対応し、コンプライアンスと柔軟性のバランスを取る。中国の日増しに厳格化するデータセキュリティと外国投資に関する規制政策に対し、日系企業は本社のシステムをそのまま適用することはできず、コンプライアンス、スピード、柔軟性のバランス点を見出さなければならない。契約条項、情報開示、データ処理などにおいて、中国の制度と市場特性を十分に組み込みながら、コンプライアンス部門と業務部門の効率的な連絡メカニズムを確立し、変革期の健全な発展を保障する。
『日系企業リーダー必読』は中国における日系企業向けの日本語研究レポートであり、中国の状況に対する日系企業の管理職の需要を満たすことを目指し、中日関係の情勢、中国政策の動向、中国経済の行き先、中国市場でのチャンス、中国における多国籍企業経営などの分野で発生した重大な事件、現状や問題について深く分析を行うものであります。毎月の5日と20日に発刊し、報告ごとの文字数は約15,000字です。
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